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Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 309, pp. tw389, 8 November 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3092005tw389]

要約 : アフリカツメガエル(Xenopus)の網膜のニューロンは、視蓋に投射して網膜のトポグラフィックマップを形成する。鼻側網膜からのニューロンが尾側の視蓋を終点とするのに対して、側頭側網膜からのニューロンは吻側の視蓋ヘと投射する。尾側から吻側への勾配を形成して発現するホメオドメイン転写因子Engrailed-2(En-2)は、遺伝子転写に対する作用を介して、こうしたマップの形成の根底をなすリガンドと受容体の勾配の確立に関与すると考えられる。En-2が分泌および細胞内移行に関与するドメインを有することに着目し、Brunetらは、En-2がトポグラフィックマップを確立する上でより直接的な役割を担っている可能性について検討した。in vitroでEn-2の勾配に曝露したところ、鼻側網膜に由来する軸策はEn-2に引き寄せられたが、側頭側網膜に由来する軸策は反発した。蛍光標識したEn-2は、網膜ニューロンの成長円錐および神経突起の軸に蓄積した。成長円錐に移行しなかったEn-2の変異体は、鼻側網膜由来の軸策の方向転換を誘導できなかった。この方向転換は、転写に対する作用で予想されるよりも迅速に開始し、細胞体から切り離された成長円錐でも起こった。細胞内移行したEn-2は単離された成長円錐でのタンパク質合成を促進し、薬理学的解析と変異解析のいずれにおいても、En-2が翻訳に対する作用を介して方向転換応答を促進することが示された。細胞内移行したEn-2が真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)およびeIF4E結合タンパク質-1のリン酸化を促進したことは、En-2が翻訳を促進するという考えと一致していた。以上より、En-2は転写因子としての役割だけでなく、トポグラフィックマップの形成においても直接的な役割を担っているのではないかと著者らは述べている。

I. Brunet, C. Weinl, M. Piper, A. Trembleau, M. Volvitch, W. Harris, A. Prochiantz, C. Holt, The transcription factor Engrailed-2 guides retinal axons. Nature 438, 94-98 (2005). [PubMed]

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