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発生 その勾配を覚えているか

DEVELOPMENT:
Remember That Gradient?

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 312, pp. tw420, 29 November 2005
.[DOI: 10.1126/stke.3122005tw420]

要約 : 初期発生時、モルフォゲン勾配は正しい空間的順序で異なる細胞型の分化を誘導する情報を提供する。細胞を特定濃度のモルフォゲンに曝露すると細胞運命が決定されるが、このモルフォゲンへの曝露は、細胞の応答を促進する遺伝子発現プログラムの遂行を完了するのに必要な何時間もの間継続される必要はない。JullienとGurdonは、アフリカツメガエル(Xenopus)胚細胞のアクチビンに対する応答を研究することにより、細胞がモルフォゲンへの短時間の曝露をどのように「記憶」しているかを探った。細胞をアクチビンに対して10分間曝露すると、数時間後に遺伝子発現が変化した。この応答は、その後の段階でアクチビン受容体のキナーゼ活性の薬理学的阻害剤により阻害されるので、持続的な受容体シグナル伝達が必要なようであった。また、原形質膜からの受容体の内部移行を妨げるドミナントネガティブ型のダイナミンは、胚細胞に注入するとアクチビン依存性の遺伝子発現を阻害したことから、持続的なシグナル伝達には受容体の内部移行も必要なようであった。リソソーム経路を介して膜タンパク質の輸送を増加させる(そして分解される速度を増加させる)変異Rabタンパク質(小グアノシン三リン酸フォスファターゼ)の発現は、アクチビンシグナルの「記憶」には影響しなかった。以上より、著者らは、このシグナル伝達受容体はまだ分解経路には入っていないとの結論に達している。むしろ、原形質膜からリソソームに移行する小胞の重要な残存が、このシグナルの原因のようである。受容体のユビキチン化は、その選別に影響を与えることが知られている。実際、プロテアソームの薬理学的阻害はアクチビンシグナル伝達を亢進させたが、受容体ユビキチンリガーゼ複合体の過剰発現によりリソソームへの受容体の移行が亢進すると、転写応答が抑制された。以上より、アクチビンへの短時間の曝露により活性化された受容体は、まだリソソームに方向づけられていないエンドソームからのシグナルを受け取りながら長期的なシグナルを提供し、このシグナルはリソソームで最終的に消滅するのではないかと著者らは提案している。

J. Jullien, J. Gurdon, Morphogen gradient interpretation by a regulated trafficking step during ligand-receptor transduction. Genes Dev. 19, 2682-2694 (2005). [Abstract] [Full Text]

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