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GPCRシグナル伝達 アレスチンが転写を活性化する方法

GPCR SIGNALING:
An Arrestin' Way to Activate Transcription

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 313, pp. tw429, 6 December 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3132005tw429]

要約 : Kangらは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)が核にシグナルを伝達して遺伝子の転写を調節する興味深い新たなメカニズムを解明した。βアレスチン(βarr)は、細胞膜に会合して受容体の脱感作およびエンドサイトーシスを促進することによりGPCRシグナル伝達を終結させるサイトゾルタンパク質であるが、さまざまな細胞シグナル伝達経路における足場タンパク質としての機能も持つ(Beaulieu and Caron参照)。Kangらは、δ-オピオイドGPCR(DOR)をトランスフェクトしたHEK293細胞において、この受容体を刺激することにより蛍光標識あるいはHAタグを付加したβarr1の核内蓄積が促進されることを突き止めた。著者らは、マイクロアレイ解析によりβarr1のノックダウンはp27(サイクリン依存性キナーゼインヒビターをコードする)および転写因子c-fosの発現を阻害することをまず明らかにし、さらにsiRNAによるノックダウン、マウス胚線維芽細胞におけるβarr1の発現あるいはHeLa細胞における過剰発現、および薬理学的解析を組み合わせて用い、DORの刺激によりβarr1を介してp27 mRNAおよびタンパク質の含有量が増加することを示した。核に蓄積しない変異型のβarr1は、こうした作用を示さなかった。核内にあるβarr1は、転写因子CREB(cAMP応答エレメント結合タンパク質)との複合体を形成し、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300をc-fosおよびp27のプロモーター領域に会合させて、ヒストンH4のアセチル化を促進した。また、内因性にDORを発現するヒトSK神経芽細胞腫細胞でも、βarr1の核内蓄積、p27の転写、p27プロモーター領域でのH4のアセチル化に対する同様の作用が観察され、DORアゴニストを脳室内に注入したところ、海馬でのp27の転写およびp27プロモーター領域でのH4のアセチル化が促進された。以上より、DORの活性化はβarr1の核への移行を促進し、p300を標的遺伝子のプロモーターに会合させて、局所的なヒストンH4のアセチル化を活性化し、その結果、遺伝子の転写を活性化するのではないかと著者らは提案している。

J. Kang, Y. Shi, B. Xiang, B. Qu, W. Su, M. Zhu, M. Zhang, G. Bao, F. Wang, X. Zhang, R. Yang, F. Fan, X. Chen, G. Pei, L. Ma, A nuclear function of s-arrestin1 in GPCR signaling: Regulation of histone acetylation and gene transcription. Cell 123, 833-847 (2005). [PubMed]
J.-M. Beaulieu, M. G. Caron, Beta-arrestin goes nuclear. Cell 123, 755-757 (2005). [PubMed]

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