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受容体 EGF受容体相互作用ネットワーク

RECEPTORS:
EGF Receptor Interaction Network

Editor's Choice

Sci. STKE,Vol. 2006, Issue 318, pp. tw478, 17 January 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3182006tw478]

要約 : 活性化された成長因子受容体は相互にチロシン残基をリン酸化し、それにより、これらの受容体と、ホスホチロシン含有ペプチドを認識して優先的に結合するSH2(Srcホモロジー2)またはPTB(ホスホチロシン結合)ドメインを有するタンパク質との相互作用が促進され、シグナル伝達が開始される。Jonesらは、ヒトゲノムにコードされるほとんどすべてのSH2およびPTBドメイン(前者100個以上、後者40個以上)を含めた、こうした相互作用のゲノム網羅的定量解析を行った。これらのドメインのプロテインマイクロアレイを作製し、上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーについて、実験で検証されたリン酸化部位に対応する60個以上の蛍光タグ付加ホスホチロシン含有ペプチドに対する結合親和性を測定した。こうした測定を77,000回以上行ったことで、ファミリーメンバー間の相互作用のパターンの比較が可能になった。これまでに論文に記載されたEGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4との65種類の相互作用のうち43種類、ならびに予測された100種類以上の新たな相互作用(後者のうちのひとつは細胞株において確認された)を突き止めた。著者らは、いくつかのドメインはこれまでのコンセンサス結合性の推定では予測されていなかった部位に結合することを発見し、このことは自身らの解析における非競合的結合条件を反映している可能性があると示唆している。また、EGFRファミリーメンバーの癌への寄与を説明する興味深い可能性にも着目した。著者らは、親和性測定を用いて、受容体が少量存在するか低度に活性化された場合(すなわち、主にパートナーと高い親和性で相互作用する)、またはより多量かつ極めて活発に活性化された場合(これらのタンパク質を過剰発現する癌で生じるように)、結合相手が変化するかどうか予測した。ErbB2は概して他に比べ乱雑で、各結合部位が平均17個以上のタンパク質と高い親和性で結合するのに対し、EGFR、ErbB3、ErbB4の部位が高い親和性で結合するパートナーは、それぞれ平均7、9、2個である。過剰発現の影響を近似するよう結合閾を低下させたところ、EGFRおよびErbB2は多くの新しいパートナーとの相互作用を示したのに対し、ErbB3のパートナーネットワークは基本的に変わらなかった。以上より、著者らは、いくつかのヒト癌で活性化されるEGFRおよびErbB3は、一部にはこれらのタンパク質により通常制御されない結合相手との乱雑な相互作用を介して、異常な影響を及ぼすことができるのではないかと推測している。

R. B. Jones, A. Gordus, J. A. Krall, G. MacBeath, A quantitative protein interaction network for the ErbB receptors using protein microarrays. Nature 439, 168-174 (2006). [PubMed]

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