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代謝 レドックス制御インスリン抵抗性

METABOLISM:
Redox-Regulated Insulin Resistance

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 331, pp. tw126, 18 April 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3312006tw126]

要約 : ホルモンのインスリンによるシグナル伝達に対する抵抗性は、2型糖尿病患者だけでなく、妊娠や肥満、敗血症ショックといった他のさまざまな生理学的状態においても大きな問題である。Houstisらは、どのようにしてこのように多様な状況がすべてインスリンシグナル伝達に対して共通の影響を引き起こすのか、これらの状況がインスリンに対する細胞の感受性に影響を与える共通の経路が存在するのかどうかについて疑問を感じた。そこでHoustisらは、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)またはデキサメサゾン(これらの2つの刺激はインスリン抵抗性を引き起こすが、大きく異なるシグナル伝達機構を介して作用する。前者は細胞表面のサイトカイン受容体を介するのに対して、後者は核ホルモン受容体を介する)に曝露した培養マウス脂肪細胞における遺伝子発現プロファイルを比較した。Houstisらの解析により、これら両方の処理に応答して同様に調節される遺伝子の18%が、活性酸素種(ROS)(細胞呼吸や他の酵素反応の際に生成するラジカル型の酸素で、他の分子に損傷を与えるとともにシグナル伝達分子としても機能することが知られている)の含有量に影響を与える産物をコードすることが示された。この手掛かりをもとにして、著者らはデキサメサゾンおよびTNF-αが両方ともにROSの細胞内蓄積量が上昇することを突き止めた。さらに、培養細胞を抗酸化分子で処理したり、ROSを除去する酵素を発現させたりすると、デキサメサゾンおよびTNFにより誘導されるインスリン抵抗性が抑制された。マウス肥満モデルにおいて、化学的抗酸化物質を用いてマウスを慢性処理すると、グルコースの恒常性とインスリン感受性が改善された。ROS蓄積量の上昇は、インスリンシグナル伝達の減少(すなわち、グルコース取り込みの減少)が適切な応答となる基質の利用可能性と酸化能力との間の不均衡として細胞により認識される可能性があるので、ROSとインスリン感受性との関係が進化してきたのではないかと著者らは述べている。さまざまな刺激がROS生成にどのように収束するのか、ROSが実際にインスリンシグナル伝達にどのように影響を及ぼすのかは解明が待たれるところであるが、その一方で抗酸化剤療法を病院でインスリン抵抗性を管理するための治療戦略として検討すべきであると著者らは提案している。

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