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細胞生物学 受容体の観察を可能にする

CELL BIOLOGY:
Receptor Watching Enabled

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 333, pp. tw143, 2 May 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3332006tw143]

要約 : Yudowskiらは、単一受容体を含む小胞がラット由来培養海馬ニューロンの細胞膜へ挿入される過程を観察できたことを報告している。著者らは、細胞外末端を緑色蛍光タンパク質(GFP)のバリアントでタグ付加した修飾型のβ2-アドレナリン作動性受容体(β2AR)を細胞内で発現させることにより、この観察を成し遂げた。この特殊なGFPタンパク質の蛍光は、細胞内小胞の酸性環境に曝露すると減弱するが、細胞表面でpH7.4の培養液に曝露すると増大する。細胞をβ2ARアゴニストのイソプロテレノール(受容体の内部移行およびその後の細胞膜への再挿入を引き起こす)に曝露した場合にのみ小胞の融合過程が検出されたことから、小胞の融合過程は内部移行した受容体の細胞表面へのリサイクリングを表しているようである。2つの異なる挿入様式が検出された。その一方では、膜内挿入のスポットが平均340ミリ秒の持続時間で一過性に観察されたのに対して、もう一方の挿入過程は約31秒の持続性を示した。いずれの場合においても、受容体はその後膜内において3×10-10平方センチメートル/秒の速度で側方拡散するように見えた。β2ARはアデニル酸シクラーゼを活性化し、それによってセカンドメッセンジャのサイクリックAMP(アデノシン3,5-一リン酸)の蓄積およびプロテインキナーゼA(PKA)の活性化を引き起こす。予めイソプロテレノールで10分間刺激した細胞では、PKAを阻害するかイソプロテレノールシグナルを除去したところ、一過性挿入の頻度が急激に(次の1分間以内に)増加した。より安定な挿入過程はPKAの阻害によっては影響を受けなかったが、受容体アゴニストを除去するとその頻度は低下した。このような異なる挿入様式の機能的結末はまだわからないが、β2ARによるシグナル伝達の恒常的調節にとって重要であるのではないかと著者らは提案し、受容体の量を調節する輸送過程は、神経伝達物質放出の制御のような複雑な調節を受ける可能性があることを強調している。

G. A. Yudowski, M. A. Puthenveedu, M. von Zastrow, Distinct modes of regulated receptor insertion to the somatodendritic plasma membrane. Nat. Neurosci. 9, 622-627 (2006). [Online Journal]

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