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モルフォゲン ヘッジホッグシグナルで提案された新たな機構

MORPHOGENS:
New Mechanism Proposed for Hedgehog Signal

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 349, pp. tw282, 22 August 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3492006tw282]

要約 : モルフォゲンであるヘッジホッグ(Hh)は、受容体smoothened(Smo)が構成的に活性化されており、Hhがpatched(Ptch1)タンパク質によるSmoの阻害を何らかの形で軽減するよう機能する、奇妙なシグナル伝達経路を活性化する。その正確な機序は不明であるが、その鍵のひとつは、Ptch1がポンプやコレステロール分子の輸送に寄与するように機能するタンパク質に似ているという事実である。Ptch1がどのようにしてSmoと情報を伝達するのかをより良く理解するために、Bijlsmaらはこれら2つの分子が同じ細胞に存在する必要があるのかどうかについて調べた。彼らは、Ptch1を発現するマウス線維芽細胞をSmoおよびSmo依存性遺伝子発現の転写レポーターを同時に発現する細胞とともに培養して、Smoシグナルは細胞間の培地中を移動できることを突き止めた。Smith-Lemli-Opitz症候群(SLOS)として知られるヒト疾患の患者は、ステロール生合成が変化しており、Hhシグナル伝達を欠損する動物に似た表現型を有することから、著者らは培地中の3β‐ヒドロキシステロイドの存在を調べ、その含有量がPtch1を過剰発現する細胞由来の培地で増大することを突き止めた。さらに、3β‐ヒドロキシステロイド合成の薬理学的阻害剤によって、トランスフェクションされた細胞におけるレポーター遺伝子のPtch1依存性活性化が消失した。3β‐ヒドロキシステロイドを産生できない動物由来の線維芽細胞は、Smoを阻害する細胞間メディエーターを産生しなかった。著者らは、この過程に関与する特定のステロイドは、7‐デヒドロコレステロール、あるいはその代謝物であるビタミンD3ではないかと考えた。実際に、ビタミンD3を細胞に添加すると、Smoの既知の阻害剤であるシクロパミンと同じぐらい効率良く、レポーター遺伝子の転写が阻害された。著者らは、Ptch1がビタミンD3を輸送し、それにより同じ細胞、あるいは隣接する細胞のSmoの機能を阻害するのではないかと述べている。このことにより、Hhシグナルは、隣接する細胞上でモルフォゲンと実際に接触する細胞へのシグナルを調節できるという特殊な性質が付与されると考えられる。

M. F. Bijlsma, C. A. Spek, D. Zivkovic, S. van de Water, F. Rezaee, M. P. Peppelenbosch, Repression of smoothened by patched-dependent (pro-)vitamin D3 secretion. PLoS Biol. 4, 1397-1410 (2006). [PubMed]

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