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細胞運命 運命は柔軟か、そうでないか

CELL FATE:
A Flexible or Inflexible Fate?

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 350, pp. tw293, 29 August 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3502006tw293]

要約 : 骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)のニューロン、筋芽細胞、骨芽細胞などの異なる細胞型への分化を支配する、局所微小環境における特異的な要因は、完全には理解されていない(Even-Ramら参照)。脳が筋肉より極めて柔らかく、筋肉がコラーゲン性の骨より柔らかいことに着目し、Englerらは、ナイーブヒトMSCをビスアクリルアミド架橋により弾性を決定したコラーゲン被覆ポリアクリルアミドゲル上で培養し、系統特異化におけるマトリクス弾性の役割を調べた。柔軟なゲル(脳に似せた)で1週間培養したMSCの形態、転写プロファイル、マーカータンパク質の発現は培養ニューロンに似ており、横紋筋の弾性に似せたゲルで培養したMSCは筋芽細胞に似ており、若い非石灰化骨に似せたゲルで培養したMSCは骨芽細胞に似ていた。培養1週目では、筋原性または骨原性分化を促進することが知られている可溶性因子への曝露は系統に影響し、「混合MSC表現型」を導いた。ところが、培養3週間後では、MSCはマトリクスに由来する系統と関連したままであった。薬理学的解析により、非筋肉ミオシンIIは、マトリクス弾性に応じた系統特異化に必要であるが、可溶性因子に応じた系統特定には必要でないことが示された。以上より、これらのデータは、マトリクス弾性がMSC系統の特異化において重要な役割を担うことを示している。

A. J. Engler, S. Sen, H. L. Sweeney, D. E. Discher, Matrix elasticity directs stem cell lineage specification. Cell 126, 677-689 (2006). [PubMed]

S. Even-Ram, V. Artym, K. M. Yamada, Matrix control of stem cell fate. Cell 126, 645-647 (2006). [PubMed]

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