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細胞生物学、低分子GTPase Racは受容体とcGMP生成とを結びつける

Cell Biology Small GTPase Rac Links Receptors to cGMP Formation

Editor's Choice

Sci. STKE, 30 January 2007 Vol. 2007, Issue 371, p. tw35
[DOI: 10.1126/stke.3712007tw35]

L. Bryan Ray

Science, Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : セカンドメッセンジャーであるグアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)は、幅広い細胞機能をコントロールし、その多くはcGMP依存性プロテインキナーゼを介して制御される。環状GMPは、グアノシン三リン酸からの生成を触媒するグアニリルシクラーゼ(GC)により合成される。Guoらによる研究は、GCの上流制御への洞察を提供している。GPCR(ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役受容体)の標的としてよく知られるアデニルシクラーゼとは異なり、膜貫通型グアニリルシクラーゼは、それ自体が受容体として作用すると考えられているが、そのリガンドが同定されていないものもある。Guoらは、細胞内シグナルが膜貫通型グアニリルシクラーゼGC-Eをどのように制御するのか探り、低分子GTPaseであるRac1の一過性の過剰発現がGC-Eの活性化をもたらすことを観察した。血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の活性化もcGMPの生成を促進し、Rac1のドミナントネガティブ体を用いて内因性Rac1の活性を阻害すると抑制された。Rac1がGC-Eの活性化とどのように共役するか探るため、著者らはRac1の既知の標的を調べた。PAK(p21活性化プロテインキナーゼ)は、こうした標的のひとつであり、cGMPの生成を促進するにあたり、Rac1の代わりを務めることが可能であった。PAKの自己阻害ドメインの発現も、GC-E活性を促進する恒常的活性型のRac1の作用を阻害した。著者らは精製タンパク質とタンパク質断片によるin vitroおよびin vivo研究を用いて、PAKがGC-Eと直接相互作用して活性化することを示した。この活性化には、PAKのキナーゼ活性が必要であった―ところが、GC-EはPAKによりリン酸化されなかったため、自己リン酸化のためだけのようであった。受容体チロシンキナーゼからcGMPへのこの新たな経路は、細胞遊走のコントロールにおいて、生理学的に重要であることが明らかになった。低分子干渉RNA(siRNA)を用いて、マウス胚線維芽細胞のGC-Aを欠乏させると、PDGFによるcGMPの蓄積が減少し、PDGF依存性細胞遊走と葉状仮足の形成が阻害された。Settlemanは、論評でこの研究について述べ、PAKを活性化する別の低分子GTPaseであるCdc42がGC-Eを活性化できないのはなぜかといった、この研究により浮き彫りになった興味深い問題のいくつかを取り上げている。

D. Guo, Y.-C. Tan, D. Wang, K. S. Madhusoodanan, Y. Zheng, T. Maack, J. J. Zhang, X.-Y. Huang, A Rac-cGMP signaling pathway. Cell 128, 341-355 (2007). [Online Journal]
J. Settleman, PAK-in’up cGMP for the move. Cell 128, 237-238 (2007). [Online Journal]

L. B. Ray, Small GTPase Rac Links Receptors to cGMP Formation. Sci. STKE 2007, tw35 (2007).

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