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神経生物学
細胞内移行を介する驚くべきチャネル

Neurobiology
Chillin’ Channels Through Internalization

Editor's Choice

Sci. STKE, 21 August 2007 Vol. 2007, Issue 400, p. tw297
[DOI: 10.1126/stke.4002007tw297]

L. Bryan Ray

Science, Science’s STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA
E. M. Green, C. F. Barrett, G. Bultynck, S. M. Shamah, R. E. Dolmetsch, The tumor suppressor eIF3e mediates calcium-dependent internalization of the L-type calcium channel CaV1.2. Neuron 55, 615-632 (2007). [Online Journal]
D. Varela, G. W. Zamponi, Use ‘em and lose ‘em--Activity-induced removal of calcium channels from the plasma membrane. Neuron 55, 539-541 (2007). [Online Journal]

要約 : 電位開口型カルシウムチャネル、特にL型カルシウムチャネル(LTC)は、ニューロンの電気的脱分極を、細胞機能や遺伝子発現を変化させる生化学的シグナル伝達系の変化へと翻訳する重要な仕組みをもたらす。Greenらは、カルモジュリンによるCa2+依存的なLTCコンダクタンスの急性阻害のほかに、より長期の負のフィードバックをもたらす別のメカニズム、すなわちCa2+依存的なチャネルの細胞内移行が存在することを示している。著者らは、細胞外ループと細胞内N末端にタグをもつようにLTCのCaV1.2を改変した。これによって、個々の培養皮質ニューロンの表面に存在するチャネルタンパク質の画分を測定することが可能になった。ニューロンの電気的脱分極により、細胞表面に存在するチャネルの画分は減少した。全反射照明蛍光顕微鏡法により、これらのチャネルはエンドソーム小胞内に細胞内移行することが示された。著者らは、細胞内移行をドミナントネガティブに阻害するチャネルの断片を特定し、その断片がチャネルを制御するタンパク質を捕捉すると仮定してツーハイブリッドスクリーニングに使用し、相互作用する予想外のタンパク質eIF3eを発見した。eIF3eタンパク質の名称は、ポリペプチド鎖伸長開始複合体と会合していることに由来するが、ユビキチン化により修飾されたタンパク質を分解または調節する機能を有する複合体であるプロテアソームやCOP9シグナロソームとも相互作用する。少なくとも過剰発現させた場合にはeIF3eは細胞内でCaV1.2と相互作用し、細胞を脱分極させると免疫沈降したCaV1.2と結合しているeIF3eの量は増大した。論文の解説文において、Varela&Zamponiは、CaV1.2のC末端断片が核に移行し、転写因子として機能することが報告されていると記している。eIF3eは、遺伝子発現を制御するC末端をタンパク分解によって遊離を活性化する区画へとチャネルを方向づけるうえで役立っているのであろうか?この興味深いシナリオが良い結果をもたらさなかったとしても、細胞表面におけるLTCの密度変化が、心機能から神経可塑性に至るまでの多様な生理学的プロセスに影響を与える機構のようである。

L. B. Ray, Chillin’ Channels Through Internalization. Sci. STKE 2007, tw297 (2007).

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