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    対立するシグナルが協調する

発生 対立するシグナルが協調する

Development
Opposing Signals Working Together

Editor's Choice

Sci. STKE, 25 September 2007 Vol. 2007, Issue 405, p. tw341
[DOI: 10.1126/stke.4052007tw341]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 脊椎動物の卵の受精は、細胞内Ca2+濃度の一過性の上昇を誘導することにより、第二減数分裂中期における細胞周期停止から卵を解放する(Jessus&Haccard参照)。2つの研究グループ(Mochida&Hunt、Nishiyama et al.)は、Ca2+-カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)の既知の役割に加えて、カルシウム依存性ホスファターゼのカルシニューリンがこの過程に不可欠であることを示している。アフリカツメガエル(Xenopus)卵抽出物において、カルシニューリンはCaMKIIとは無関係に、Ca2+に応答して一過性に活性化された。カルシニューリンを阻害すると、サイクリンの分解、中期−間期移行時に脱リン酸化されるリン酸化タンパク質の脱リン酸化、精子クロマチンの脱凝縮、核膜の形成などのように、活性化と関連するさまざまなCa2+依存性の生化学的・形態学的現象が影響を受けた。Nishiyamaらは、恒常的活性型のカルシニューリンは精子星状体の形成を減少させ、受精卵における雄雌前核の相互移動を阻害することを突き止めた。MochidaとHuntは、Ca2+が、カルシニューリン活性の初期の一過性上昇の後に、カルシニューリン以外により媒介されるホスファターゼ活性の第二波を誘導することを突き止めた。この活性は、活性化卵由来の「サイクリング」抽出物において有糸分裂への次の移行とともに消失し、有糸分裂が完結したときに再度出現する。このように、両研究は、受精におけるCa2+シグナルはカルシニューリンとCaMKIIを別個に活性化し、これらの2つの対立するシグナルが協調して中期停止を破り、細胞周期を進行させ、胚発生を開始させることを示している。

S. Mochida, T. Hunt, Calcineurin is required to release Xenopus egg extracts from meiotic M phase. Nature 449, 336-340 (2007). [PubMed]
T. Nishiyama, N. Yoshizaki, T. Kishimoto, K. Ohsumi, Transient activation of calcineurin is essential to initiate embryonic development in Xenopus laevis. Nature 449, 341-345 (2007). [PubMed]
C. Jessus, O. Haccard, Calcium's double punch. Nature 449, 297-298 (2007). [PubMed]

E. M. Adler, Opposing Signals Working Together. Sci. STKE 2007, tw341 (2007).

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