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幹細胞
骨髄をドーピングする

Stem Cells
Doping the Bone Marrow

Editor's Choice

Sci. STKE, 2 October 2007 Vol. 2007, Issue 406, p. tw349
[DOI: 10.1126/stke.4062007tw349]

John F. Foley

Science’s STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 移植造血幹細胞を用いた骨髄(BM)の再増殖は、免疫不全や悪性腫瘍の治療に不可欠である。CD34を発現するBM幹細胞は、骨髄サイトカイン顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)処理により動員される。骨髄はドーパミンストアを含有する高度に神経支配された組織であることから、Spiegelらは、ドーパミンが造血に及ぼす影響を調べた。フローサイトメトリーの結果、G-CSFによるヒトCD34+細胞の処理は、ドーパミン受容体DR3およびDR5の存在量を増加させた。In vitro遊走アッセイにより、GM-CSF処理は、ドーパミンに遊走するCD34+細胞数の増加をもたらすことが示された。コロニー形成を測定することにより、著者らはドーパミン処理がCD34+細胞の増殖を増加させることを突き止めた。さらに、感受性マウスBMにおけるヒトG-CSF動員CD34+細胞の移植は、ドーパミンアゴニストを用いた前処理により増加した。β2-アドレナリン作動性受容体(β2-AR)アゴニストであるエピネフリンにおいても、同様の結果が得られた。フローサイトメトリーにより、GM-CSFおよびエピネフリンによるCD34+細胞の処理は、幹細胞増殖に関与することが知られているWntシグナル伝達経路の下流メディエーターであるβ-カテニンの蓄積をもたらすことが示された。GM-CSFおよびエピネフリンで処理したヒトCD34+細胞によるマウスBMへの移植は、Wntシグナル伝達を妨害することにより阻害された。この研究は、神経伝達物質が造血前駆細胞の機能を制御するうえで担う重要な役割を指摘し、神経伝達物質を骨髄サイトカインと組み合わせることは、幹細胞移植の有効性を増強するうえで臨床的に意味があることを示唆するものである。

A. Spiegel, S. Shivtiel, A. Kalinkovich, A. Ludin, N. Netzer, P. Goichberg, Y. Azaria, I. Resnick, I. Hardan, H. Ben-Hur, A. Nagler, M. Rubinstein, T. Lapidot, Catecholaminergic neurotransmitters regulate migration and repopulation of immature human CD34+ cells through Wnt signaling. Nat. Immunol. 8, 1123-1131 (2007). [PubMed]

J. F. Foley, Doping the Bone Marrow. Sci. STKE 2007, tw349 (2007).

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