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Sci. STKE, 11 December 2007 Vol. 2007, Issue 416, p. tw445
[DOI: 10.1126/stke.4162007tw445]

John F. Foley

Science’s STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 上皮―間葉転換は、がん細胞が細胞外マトリックスを再構築したり、組織に浸潤したりするのを可能にする。ところが、浸潤性扁平上皮がん(SCC)細胞は上皮マーカーを失わないことから、Gaggioliらはこれらの細胞がどのようにして組織に浸潤するのかを探ることにした。著者らは、主にコラーゲンとラミニンを含むマトリックスブロックからなる三次元培養システムを考案し、露出したブロックの上面を培地中に置いた。この表面に置かれたSCC細胞は、免疫組織化学染色によりしらべると、単独で培養した場合にはマトリックスに侵潤しなかったが、腫瘍由来の線維芽細胞とともに培養した場合にはマトリックスに侵潤した。マトリックスの薄層を線維芽細胞とSCC細胞との間に置いた場合、SCC細胞の侵潤は阻害された。SCC細胞と線維芽細胞を判別できる蛍光標識により、マトリックスに浸潤しつつある一連のSCC細胞は常に線維芽細胞により先導されることが示された。電子顕微鏡法および反射顕微鏡法により、線維芽細胞により生成されるマトリックス中の「トラック」には、フィブロネクチンの沈着とマトリックス再構築の形跡が含まれることが明らかになった。阻害薬を用いた研究により、線維芽細胞のマトリックスへの侵潤はマトリックスメタロプロテイナーゼの活性に依存するのに対して、マトリックスの再構築は低分子量グアノシントリホスファターゼ(GTPase)のRhoおよびRho関連キナーゼ(ROCK)に依存することが示された。α3インテグリンやα5インテグリンに対する抗体も、線維芽細胞によるマトリックス再構築を阻害した。SCC細胞におけるRhoあるいはROCKの活性を阻害しても、SCC細胞が線維芽細胞を追跡する能力には影響はなかった。しかし、GTPase のCdc42を阻害すると侵潤が阻止された。頭部および頚部に由来するSCCの切片の免疫組織化学分析により、繊維芽細胞やフィブロネクチン沈着に近接して、浸潤しつつあるSCC細胞の集団が示された。解説において、Radiskyは、この研究により明らかになった浸潤過程が、がん転移を理解する上でいかに役立つかについて論じている。

C. Gaggioli, S. Hooper, C. Hidalgo-Carcedo, R. Grosse, J. F. Marshall, K. Harrington, E. Sahai, Fibroblast-led collective invasion of carcinoma cells with differing roles for RhoGTPases in leading and following cells. Nat. Cell Biol. 9, 1392-1400 (2007). [PubMed]
D. C. Radisky, Leading the charge. Nat. Cell Biol. 9, 1341-1342 (2007). [PubMed]

J. F. Foley, Follow the Leader. Sci. STKE 2007, tw445 (2007).

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