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繊毛、IP6はリズムに乗るか?

Cilia IP6 Got Rhythm?

Editor's Choice

Sci. STKE, 18 December 2007 Vol. 2007, Issue 417, p. tw455
[DOI: 10.1126/stke.4172007tw455]

John F. Foley

Science’s STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 運動性の繊毛は、微小管の中核を含む細胞膜の突起であり、各微小管の相対的な動きが繊毛の波打ち運動に寄与する。発生胚の左右パターン形成は、モルフォゲンの繊毛依存的な分布の違いにより生じると考えられる。ゼブラフィッシュ胚において、IP6を合成する酵素であるイノシトール1,3,4,5,6-五リン酸(IP5)2-キナーゼ(Ipk1)をノックアウトすると左右器官配置に欠陥が生じるが、関与するメカニズムは不明である。Sarmahらはこの研究を発展させ、ipk1 mRNAを標的とするアンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(MO)を胚に注入することにより、ゼブラフィッシュにおけるipk1の発現をノックダウンした(ipk1MO1胚)。クッパー胞(KV)は、ゼブラフィッシュにおいて左右器官配置を開始する器官である。著者らは、野生型胚のKV繊毛は規則的な頻度で反時計回りに波打ち運動するのに対して、ipk1MO1胚のKV繊毛は特定の運動方向を持たずに振動することを突き止めた。さらに、免疫細胞化学分析により、ipk1MO1胚の繊毛は野生型胚よりも短いことが明らかになった。ipk1MO1胚においてIpk1を異所性に発現させると、繊毛の長さおよび運動は回復するのに対して、Ipk1の触媒不活性型変異体を異所性に発現させても回復は起こらなかった。蛍光顕微鏡法により解析すると、Ipk1は野生型胚の繊毛の基底小体において中心体に局在することがわかった。透過型電子顕微鏡法により、ipk1MO1胚の繊毛における微小管の構成は、野生型胚と同様であることが実証された。ところが、キネシンタンパク質により仲介されるメラノソーム(色素小胞)の微小管依存的な順方向の動きは、ipk1MO1繊毛において野生型繊毛よりも著しく遅かった。以上のデータから、Ipk1だけでなく、Ipk1の生成物であるIP6も、繊毛長の維持と繊毛運動の調節に関与することが示唆される。

B. Sarmah, V. P. Winfrey, G. E. Olson, B. Appel, S. R. Wente, A role for the inositol kinase Ipk1 in ciliary beating and length maintenance. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104, 19843-19848 (2007). [Abstract] [Full Text]

J. F. Foley, IP6 Got Rhythm? Sci. STKE 2007, tw455 (2007).

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