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細胞増殖
GABAが細胞増殖を阻害する

Proliferation
GABA Stems Proliferation

Editor's Choice

Science Signaling, 29 January 2008
Vol. 1, Issue 4, p. ec31
[DOI: 10.1126/stke.14ec31]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 細胞の増殖と分化は逆相関の関係にある過程であるが、通常は細胞周期のG1期に調節されている。自己再生をする幹細胞は、増殖しながら多分化能を保持する必要がある。胚性幹細胞(ES細胞)は、たしかに増殖が調節されるG1期という経路を欠いているようである。Andängらは、マウスES細胞および末梢神経堤幹細胞(NCS)においてγアミノ酪酸A型受容体(GABAAR)のサブユニットとGABA合成酵素を同定した。さらに、膜電位感受性色素を使った電気生理学的解析によって、その細胞には機能性のGABAARが存在することを確認した。GABAARアゴニストのmuscimolは培養幹細胞の増殖を阻害するのに対して、そのアンタゴニストのビククリンは増殖を促進した。RNA干渉によるGABAAR β3サブユニット(GABAAR β3)のノックダウンによっても増殖は促進された。細胞周期分布を解析したところ、受容体の活性化によってES細胞のS期への集積が促進されることが示された。さらにmuscimolは明らかなDNA損傷を認めないときでも、チェックポイントキナーゼであるataxia telangiectasia mutated (ATM) とataxia telangiectasia Rad3-related (ATR)によって、ヒストンH2AX(S/G2 DNA損傷チェックポイント応答に関与する)のリン酸化を促進した。さらに、GABA依存性の増殖抑制はH2AXに依存していた。muscimolは胚盤胞へのブロモデオキシウリジンの取り込みをin vivoで抑制し、GABAAR β3に対するsiRNAを受精卵に注入すると胚胞期の胚の発達が早められた。さらにGABAは、NCS細胞の増殖も調節した。このようにES細胞およびNCS細胞の増殖は、DNA損傷チェックポイント応答の構成要素を用いた経路で、オートクリンまたはパラクリン性のGABAにより調節されているようである。

M. Andang, J. Hjerling-Leffler, A. Moliner, T. K. Lundgren, G. Castelo-Branco, E. Nanou, E. Pozas, V. Bryja, S. Halliez, H. Nishimaru, J. Wilbertz, E. Arenas, M. Koltzenburg, P. Charnay, A. El Manira, C. F. Ibanez, P. Ernfors, Histone H2AX-dependent GABAA receptor regulation of stem cell proliferation. Nature 451, 460-464 (2008).[PubMed]

E. M. Adler, GABA Stems Proliferation. Science Signaling 1, ec31 (2008).

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