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幹細胞 
グルコースが筋肉を太らせる

Stem Cells
Glucose Fattens Up Muscle

Editor's Choice

Science Signaling, 5 February 2008
Vol. 1, Issue 5, p. ec41
[DOI: 10.1126/stke.15ec41]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 脂肪組織と筋組織にはいずれも、脂肪細胞に分化することができる幹細胞が含まれる。循環血中のグルコース濃度の上昇と体脂肪蓄積には関連性があるので、Aguiariらは、グルコース曝露が幹細胞の分化誘導に十分なのかどうかについて検討した。筆者らは、ヒト脂肪組織またはラット新生仔の筋組織から単離した幹細胞を、低濃度(5.5mM)あるいは高濃度(25mM)のグルコースを含む培地に曝露させ、グルコース濃度が高いとき脂肪細胞の表現型を示す細胞の割合が増えることを発見した。高濃度のグルコースは,活性酸素種の生成とプロテインキナーゼCβ(PKCβ)の活性化(細胞膜への移行)を刺激した。RNAi法を用いてPKCβ活性の抑制すると筋由来幹細胞の脂肪細胞への分化が阻害されたのに対して、低濃度グルコース含有培地に過酸化水素を添加することにより筋由来幹細胞の脂肪細胞への分化が亢進した。PKCβの過剰発現により、脂肪細胞の表現型を示す細胞の割合が高くなった。高濃度グルコース含有培地を用いてスポンジ状支持体上で分化させた脂肪細胞由来幹細胞を、ヌードラットにうまく移植すると、この組織には血管が再生された。外科的に摘出して形態上の特性を調べたところ、この組織には脂肪細胞、前駆脂肪細胞および毛細血管が含まれていた。このように、肥満の一般的な原因であり糖尿病とも関係している循環血中の高いグルコース濃度は、脂肪組織の拡大のみならず、筋細胞や(既報にあるとおり)膵β細胞など非脂肪組織の脂肪細胞への分化をも引き起こす重要な要因であると考えられる。

P. Aguiari, S. Leo, B. Zavan, V. Vindigni, A. Rimessi, K. Bianchi, C. Franzin, R. Cortivo, M. Rossato, R. Vettor, G. Abatangelo, T. Pozzan, P. Pinton, R. Rizzuto, High glucose induces adipogenic differentiation of muscle-derived stem cells. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 105, 1226-1231 (2008). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Glucose Fattens Up Muscle. Science Signaling 1, ec41 (2008).

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