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免疫学
毒素がT細胞を標的にする

Immunology
Toxin Targets T Cells

Editor's Choice

Sci. Signal., 6 May 2008
Vol. 1, Issue 18, p. ec159
[DOI: 10.1126/stke.118ec159]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 化合物2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(tetrachlorodibenzo-p-dioxin:TCDD、ダイオキシンとも呼ばれる)は、高い毒性をもつ環境汚染物質であり、多環芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor:AHR)として知られるリガンド活性化転写因子を調節することによって作用する。AHRに対する内因性の調節性リガンドは今のところ不明である。2本の論文が、AHRはT細胞分化の制御において重要な役割を果たすと報告している。この役割は、環境毒素への曝露の素因がある先進工業国において自己免疫疾患の有病率が高いことを説明するのに役立つかもしれない。T細胞は、Treg細胞またはTH17細胞に分化することができる。Treg細胞は、エフェクター細胞の増殖および炎症性サイトカインの分泌を阻害することによって炎症の抑制を助ける。TH17細胞は、通常は炎症を促進する。ダイオキシンへの曝露は免疫応答を抑制するが、その機構は明らかになっていない。Quintanaらは、Treg細胞に高発現する1つの遺伝子(Foxp3)の近くの調節領域に、進化的に保存されたAHRの結合部位が含まれることから、AHRとT細胞分化を結びつけた。Veldhoenらは、TH17細胞がAHRを特異的に発現すると述べた。後者のグループは、AHRの活性化がTH17細胞によるサイトカインの発現をin vitroで増大させること、AHR欠損マウスにおいて、実験的な自己免疫性脳炎を誘導するとTH17細胞の産生が低下することを示した。Quintanaらは続いて、AHRが実際にFoxp3の発現を直接調節することを示した。さらには、マウスにおける実験によって、AHRを活性するのに用いられたリガンドに応じて、Treg細胞またはTH17細胞のどちらかへの分化を促進する可能性があることを示した。著者らは、このリガンド特異的な炎症反応の調節により、AHRが免疫機能の調節のための極めて価値のある治療標的になるかもしれないと述べている。StevensとBradfieldが注釈を提供する。

F. J. Quintana, A. S. Basso, A. H. Iglesias, T. Korn, M. F. Farez, E. Bettelli, M. Caccamo, M. Oukka, H. L. Weiner, Control of Treg and TH17 cell differentiation by the aryl hydrocarbon receptor. Nature 453, 65-71 (2008). [PubMed]

M. Veldhoen, K. Hirota, A. M. Westendorf, J. Buer, L. Dumoutier, J.-C. Renauld, B. Stockinger, The aryl hydrocarbon receptor links TH17-cell-mediated autoimmunity to environmental toxins. Nature 453, 106-109 (2008). [PubMed]

E. A. Stevens, C. A. Bradfield, T cells hang in the balance. Nature 453, 46-47 (2008). [PubMed]

L. B. Ray, Toxin Targets T Cells. Sci. Signal. 1, ec159 (2008).

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