代謝 
糖センサー

Metabolism
Sugar Sensor

Editor's Choice

Sci. Signal., 14 October 2008
Vol. 1, Issue 41, p. ec353
[DOI: 10.1126/scisignal.141ec353]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : BOSS(bride of sevenless)は、通常のシグナル伝達タンパク質ではない。BOSSは、7回膜貫通領域を特徴とするヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質のファミリーに属する。しかし、BOSSが最初に特徴付けられたのは、ショウジョウバエ(Drosophila)の眼の分化における役割であり、それは、受容体としてではなく、受容体チロシンキナーゼSevenlessのリガンドとしての役割であった。BOSS自体にリガンドが存在するかどうかや、BOSS自体の受容体機能がどのようなものかは、Kohyama-Koganeyaらがboss欠損ハエのサイズが小さい理由を突き止めるまでは不明であった。彼らは、哺乳類の肝臓に相当するハエの脂肪体でBOSSが大量に発現していることを見出した。BOSSの機能に関するもう1つのヒントは、BLAST解析によって、トレハロース味覚受容体および糖などの小分子を輸送するトランスポーター分子(CG152210)との類似性が示されたことであった。BOSSをヒトHEK293細胞にトランスフェクションすると、他の糖には応答しないが、グルコースに応答してレポーター遺伝子が活性化された。また、細胞をグルコースに曝露すると、BOSSが細胞内移行した。変異boss1ハエでは、血リンパ内の糖および脂質濃度が低下し、トリアシルグリセロール量が増大していたことから、脂質代謝の障害が示唆された。これらの特徴は、インスリンシグナル伝達が破壊されたハエと共通しており、実際にboss変異ハエでは、通常はインスリンに応答して活性化される酵素のホスホイノシチド3-キナーゼの活性が低下しており、キナーゼAktのリン酸化が減少していた。著者らは、ヒトにはBOSSと配列類似性を共有する受容体GPRC5Bがあると指摘し、グルコースセンサーとしてのBOSSの役割は、肥満や糖尿病のような疾患の理解に関係している可能性があると述べている。

A. Kohyama-Koganeya, Y.-J. Kim, M. Miura, Y. Hirabayashi, A Drosophila orphan G-protein coupled receptor BOSS functions as a glucose-responding receptor: Loss of boss causes abnormal energy metabolism. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 15328-15333 (2008). [Abstract] [Full Text]

L. B. Ray, Sugar Sensor. Sci. Signal. 1, ec353 (2008).

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