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発生生物学 
密封状態を作り出す

Developmental Biology
Making a Tight Seal

Editor's Choice

Sci. Signal., 25 November 2008
Vol. 1, Issue 47, p. ec400
[DOI: 10.1126/scisignal.147ec400]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 中枢神経系(CNS)の血管内膜の透過性は、体内の他の部位の血管よりも制限されている。これが血液を介する毒素や病原菌からCNSを保護するための極めて選択的な血液脳関門となるが、血液脳関門がどのように形成されるのかについてはほとんどわかっていない(LammertのPerspective参照)。Stenmanらの報告によると、Wnt7aおよびWnt7bは、血管新生の際にCNSが由来する胚性組織である神経上皮で産生され、これらのリガンドのうち少なくとも1つはCNSの適正な血管新生のために存在するに違いない。神経上皮におけるWnt7aWnt7bの両方の機能が欠損している動物は、CNSにおける出血の表現型を示した。また、遺伝学的実験の結果は、適正な血管新生のためには血管内皮では古典的Wntシグナル伝達経路エフェクターであるβ-カテニンを必要とするが、神経上皮ではこれは必要ないことを示唆した。最初は神経上皮に発現しているグルコース輸送体GLUT1は、血液脳関門が形成されるにつれて血管上皮に限定されて増加していくが、このGLUT1発現の変化にはWnt7aおよびWnt7bが必要であった。これらの結果から、神経上皮で産生されたWnt7aおよびWnt7bが浸潤血管内皮において古典的Wntシグナル伝達経路を活性化し、そのシグナルは血液脳関門におけるグルコース輸送体GLUT1の特徴的な高発現に必要であるというモデルが示唆される。これらの結果は、血液脳関門がどのように形成され、その透過性が発生段階でどのように失われるか、臨床的に操作できるのかを決定するための開始点となるかもしれない。

J. M. Stenman, J. Rajagopal, T. J. Carroll, M. Ishibashi, J. McMahon, A. P. McMahon, Canonical Wnt signaling regulates organ-specific assembly and differentiation of CNS vasculature. Science 322, 1247-1250 (2008). [Abstract] [Full Text]

E. Lammert, Brain Wnts for blood vessels. Science 322, 1195?1196 (2008). [Summary] [Full Text]

A. M. VanHook, Making a Tight Seal. Sci. Signal. 1, ec400 (2008).

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