代謝 
回り道

Metabolism
The Long Way Around

Editor's Choice

Sci. Signal., 6 January 2009
Vol. 2, Issue 52, p. ec1
[DOI: 10.1126/scisignal.252ec1]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 脂肪細胞由来のホルモンであるレプチンは、部分的には膵臓β細胞に直接作用することによってインスリン産生を抑制するが、これにはレプチンの間接的な作用も関与している。これとは対照的に、骨芽細胞が分泌するオステオカルシンは、β細胞によるインスリン分泌を促進する。レプチンが骨芽細胞の活性も阻害することを考えて、Hinoiらは、レプチンがオステオカルシンの活性に影響を与えるかどうかについて検討した。レプチン欠損(ob/ob)マウスでは、野生型(WT)マウスと比較して血清インスリン濃度が高かったのに対して、血清グルコース濃度は低かった。レプチンは、ob/obマウスから単離された膵臓ランゲルハンス島からのインスリン分泌を、未処理の膵臓ランゲルハンス島からの分泌と同程度まで低下させたが、これだけではin vivoにおけるレプチン欠損の影響を説明するには十分ではなかった。レプチン受容体が欠損したニューロンをもつマウスは、WTマウスと比較して血清インスリン濃度は高かったが、アドレナリン作動性受容体(AR)アゴニストのエピネフリンの濃度は低く、交感神経のトーンが低いことが示唆された。β-ARアゴニストのイソプロテレノールは、未処理マウスと比較してob/obマウスの血清インスリン量を減少させた。骨芽細胞がβ2-AR(Adrβ2osb-/-マウス)を欠損しているマウスの血清インスリンは、WTマウスと比較して高かった。また、β-ARアンタゴニストのプロプラノロールは、未処理マウスと比較して、WTマウスの血清インスリンを増大させた。さらに、レプチンは、WTにおいてインスリン産生を低下させたが、Adrβ2osb-/-マウスでは低下させなかった。骨芽細胞をイソプロテレノールで処理すると、オステオカルシンを不活性化するタンパク質Espの遺伝子発現が上昇した。実際に、ob/obマウスでEspをノックアウトすると、高インスリン血症が悪化した。このように、レプチンは、交感神経のトーンを亢進させることによってオステオカルシン活性を低下させ、それによってβ細胞によるインスリン産生を抑制する。これらのデータから、グルコース恒常性の調節において、脂肪と骨格の間のクロストークが重要な役割を果たすことが示唆される。

E. Hinoi, N. Gao, D. Y. Jung, V. Yadav, T. Yoshizawa, M. G. Myers Jr., S. C. Chua Jr., J. K. Kim, K. H. Kaestner, G. Karsenty, The sympathetic tone mediates leptin’s inhibition of insulin secretion by modulating osteocalcin bioactivity. J. Cell Biol. 183, 1235-1242 (2008). [Abstract] [Full Text]

J. F. Foley, The Long Way Around. Sci. Signal. 2, ec1 (2009).

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