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老化
酸化ストレスが感覚の低下を媒介する

Aging
Oxidative Stress Mediates Sensory Decline

Editor's Choice

Sci. Signal., 5 May 2009
Vol. 2, Issue 69, p. ec152
[DOI: 10.1126/scisignal.269ec152]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 歳を重ねるにつれて、我々の感覚は鈍化する。視覚、聴覚、嗅覚、さらに味覚も低下する。線虫(Caenorhabditis elegans)の老化に関する知見から、カリウムチャネルの酸化的損傷がこの過程に関連付けられた。カリウムチャネルのKVS-1は、線虫の神経系、および食物に対する走化性応答を媒介するASEニューロンに存在する。CaiとSestiは、再構成系において、酸化(クロラミンTまたは過酸化水素の添加)によりKVS-1の電気生理学的特性が変化することを発見した。すなわち、酸化によりKVS-1のコンダクタンスが増大した(これは神経の興奮性を低下させることになる)が、C113S変異チャネルは酸化による電気生理学的特性の変化に抵抗性であったことから、このような増大はCys113によるものであった。kvs-1-ノックアウト線虫で野生型KVS-1チャネルまたはC113S-KVS-1チャネルのいずれかを発現させたとき、野生型KVS-1を発現する線虫の方が、酸化物曝露による走化性応答の喪失がはずっと顕著であり、さらにこれらの線虫ではジチオスレイトール(DTT)とのインキュベーションによって走化性が回復することを著者らは示した。対照的に、C113S-KVS-1を発現する線虫では酸化物曝露後の走化性低下が抑えられ、DTTによる影響もほとんどなかった。また、ASEニューロンの電気生理学的解析から、野生型線虫および野生型KVS-1チャネルが再構成された線虫では、酸化物の添加によりカリウム電流が変化するが、C113S-KVS-1チャネルが再構成された線虫では変化しないことが示された。線虫の加齢に伴って、外部からの酸化物添加により生じる電気生理学的特性の変化と類似する変化を、多くのASEニューロンが示した。このような変化は概ね、C113S-KVS-1チャネルの再構成によって、またはスーパーオキシドジスムターゼとカタラーゼを過剰発現している線虫で抑制された。したがって線虫においては、カリウムチャネルの酸化的損傷の蓄積が、老化に伴う知覚低下に寄与している。

S.-Q. Cai, F. Sesti, Oxidation of a potassium channel causes progressive sensory function loss during aging. Nat. Neurosci. 12, 611-617 (2009). [PubMed]

N. R. Gough, Oxidative Stress Mediates Sensory Decline. Sci. Signal. 2, ec152 (2009).

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