免疫学
炎症を鎮める接触

Immunology
A Calming Touch

Editor's Choice

Sci. Signal., 14 July 2009
Vol. 2, Issue 79, p. ec233
[DOI: 10.1126/scisignal.279ec233]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : インフラマソームは、カスパーゼ1を活性化することによって多様な病原体または危険に関連するシグナルに応答するサイトゾルのタンパク質複合体である。カスパーゼ1は、炎症性サイトカインであるインターロイキン1β(IL-1β)の前駆体(pro-IL-1β)をプロセシングし、IL-1βを分泌できる状態にする。IL-1βは、その効力のせいで、野放しにされると組織損傷や疾患を引き起こす可能性がある。Guardaらは、ある種のリンパ球が自然免疫細胞に誘発される炎症を抑制することに注目し、インフラマソームに対するリンパ球の作用について調べた。リポ多糖(LPS、pro-IL-1βをコードする遺伝子の発現を促進する)とATP(NOD様受容体タンパク質3[NLRP3]を含むインフラマソームを活性化する)で処理したマウス骨髄由来マクロファージを、活性化された記憶CD4+T細胞と培養すると、マクロファージによるIL-1βの分泌が低下した。T細胞受容体の刺激を介して活性化されていない記憶CD4+T細胞は、このマクロファージによるIL-1βの分泌を阻害できず、他のT細胞サブセットもIL-1βの分泌を阻害できなかった。さらに、記憶CD4+T細胞は、炎症性サイトカインおよびケモカインのインフラマソーム非依存性の産生を阻害しなかった。インフラマソーム活性の阻害は、活性化T細胞とマクロファージの接触を必要とし、活性化T細胞上に存在してマクロファージ上でCD40と結合するCD40Lのような膜結合型腫瘍壊死因子ファミリーメンバーのリガンドの存在に依存した。マウスのNLRP3依存性腹膜炎モデルでは、マクロファージを刺激した状況下において、抗原によってT細胞を活性化させると、T細胞が活性化されていないマウスの場合に比べて、炎症が抑えられる結果となった。これらのデータを考え合わせると、記憶CD4+T細胞は、損傷を与えかねない、インフラマソーム依存性のマクロファージ応答を特異的に阻害するように作用するが、効果的な自然免疫応答に必要な他の炎症性要素には作用しない。

G. Guarda, C. Dostert, F. Staehli, K. Cabalzar, R. Castillo, A. Tardivel, P. Schneider, J. Tschopp, T cells dampen innate immune responses through inhibition of NLRP1 and NLRP3 inflammasomes. Nature 460, 269-273 (2009). [PubMed]

J. F. Foley, A Calming Touch. Sci. Signal. 2, ec233 (2009).

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