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炎症
TLR4を執拗(テネイシャス)に活性化し続ける

Inflammation
A Tenacious Hold on TLR4

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 July 2009
Vol. 2, Issue 80, p. ec241
[DOI: 10.1126/scisignal.280ec241]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 慢性関節リウマチは、関節および骨の破壊に進展しうる慢性炎症性疾患である。Toll様受容体4(TLR4)の阻害因子は、慢性関節リウマチの症状緩和に有望であることが臨床治験で示された。しかし、慢性関節リウマチにおいてTLR4を活性化する内因性リガンドはわかっていない。細胞外マトリックス糖タンパク質テネイシンCの存在量は、慢性関節リウマチ患者の滑膜、滑液、および軟骨で増大しており、テネイシンCは他のTLR4リガンドと似たドメインを含むことから、Midwoodらは、テネイシンCがTLR4のリガンドではないかと思った。野生型マウスでは、メチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)を関節空隙に注入して侵食性関節炎を誘導すると、軟骨細胞死ならびに軟骨および骨の侵食がおこった。Tnc-/-マウスでは、mBSA注入後すぐに炎症の徴候(細胞浸潤など)が見られたが、炎症は持続せず、関節破壊へとは進行しなかった。ヒトの初代培養マクロファージおよび滑膜線維芽細胞にテネイシンCを投与すると、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)、およびIL-8などの炎症性サイトカインの産生が誘導された。より具体的には、テネイシンCのフィブリノーゲン様球状(FBG)ドメインが、ヒトマクロファージではTNF-α産生を誘導し、野生型マウスの関節空隙に注入された場合には、関節炎症(炎症性細胞の浸潤および滑膜炎で測定)、軟骨プロテオグリカンの喪失、軟骨細胞死を引き起こした。FBGドメインによるIL-6およびTNF-α産生の誘導には、TLR4および下流のアダプタータンパク質myeloid differentiation factor 88(MyD88)が必要であった。テネイシンCの存在量は急性炎症時には増大し、慢性炎症では高レベルが維持されることから、著者らは、テネイシンCが慢性関節リウマチの特徴である持続性炎症を促進すると提案している。

K. Midwood, S. Sacre, A. M. Piccinini, J. Inglis, A. Trebaul, E. Chan, S. Drexler, N. Sofat, M. Kashiwagi, G. Orend, F. Brennan, B. Foxwell, Tenascin-C is an endogenous activator of Toll-like receptor 4 that is essential for maintaining inflammation in arthritic joint disease. Nat. Med. 15, 774-780 (2009). [PubMed]

W. Wong, A Tenacious Hold on TLR4. Sci. Signal. 2, ec241 (2009).

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