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SH2ドメイン 
深まる理解、もうひとつの結合部位

SH2 Domains
Getting a Second Grip

Editor's Choice

Sci. Signal., 18 August 2009
Vol. 2, Issue 84, p. ec271
[DOI: 10.1126/scisignal.284ec271]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : ホスホリパーゼC-γ(PLC-γ)のようなSrcホモロジー2(SH2)ドメインをもつタンパク質が、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)のような活性化された受容体型チロシンキナーゼ(RTK)のリン酸化チロシン(pTyr)残基に結合することは、RTKの活性に不可欠である。ペプチド結合の実験によって、多くのSH2ドメインの特異的な標的が同定されている。しかし、これらのペプチドに対する結合親和性はあまり強くないことから、in vivoでは、SH2ドメインとRTKの相互作用には他の部位が関与している可能性がある。Baeらは、FGFR1のリン酸化チロシンキナーゼドメインおよびC末端領域(FGFR1-3P)がPLC-γのN-SH2ドメインおよびC-SH2ドメイン(両ドメインとも、FGFR1に特異的で、pTyrを含むペプチドと結合可能であるが、FGFR1タンパク質の該当領域に結合するのはN-SH2のみである)を含む断片と結合した状態の結晶構造を解明した。著者らは、標準的なpTyr結合部位を介するFGFR1-3Pとの結合に加えて、N-SH2ドメインがFGFR1-3PのpTyrを含まない別の領域とも結合することを発見した。結合実験では、N-SH2のFGFR1-3Pに対する親和性は、N-SH2またはC-SH2ドメインの該当ペプチドに対する親和性の10〜70倍であることが示された。この新たに見つかったN-SH2の結合部位(第2結合部位)の標的と成るFGFR1-3P上の領域のアミノ酸残基を変異させると、N-SH2ドメインのFGFR1-3Pに対する全体的な親和性は低下した。トランスフェクション細胞を用いた実験では、FGFR1-3P上の先と同じアミノ酸残基の変異が、N-SH2ドメインの標準的領域の標的であるpTyr残基の変異とほぼ同程度に、FGF依存性のPLC-γのリクルートおよび活性化を阻害した。これらの実験結果を考え合わせると、SH2ドメインを含むタンパク質が、in vivoにおいて標的RTKと選択的に結合する機構が示唆される。

J. H. Bae, E. D. Lew, S. Yuzawa, F. Tomé, I. Lax, J. Schlessinger, The selectivity of receptor tyrosine kinase signaling is controlled by a secondary SH2 domain binding site. Cell 138, 514-524 (2009). [PubMed]

J. F. Foley, Getting a Second Grip. Sci. Signal. 2, ec271 (2009).

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