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免疫学 
優れた免疫応答が悪になるとき

Immunology
When a Better Immune Response Is Bad

Editor's Choice

Sci. Signal., 25 August 2009
Vol. 2, Issue 85, p. ec280
[DOI: 10.1126/scisignal.285ec280]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)に感染した女性は、体内のウイルス量が同程度の男性と比べて、後天性免疫不全症候群(AIDS)発症のリスクが高い。Meierらは、性を対応させた患者の形質細胞様樹状細胞(pDC)を用いて、Toll様受容体(TLR)7および8を刺激するHIV-1由来のリガンドおよび不活化HIV-1に対する応答を解析し、応答した細胞の比率は男女で同等であるが、女性由来の細胞ではインターフェロン-α(IFN-α)の産生がより多く、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生には差がないことを見出した。一方、TLR9リガンドに対する応答には男女間で差がなかった。血漿プロゲステロン濃度が、HIV-1由来のTLR7およびTLR8リガンドに応答してIFN-αを産生するpDCの比率と相関しており、閉経後女性では、閉経前女性と比べて、TLR7/8リガンドに曝露したときに、IFN-αを産生するpDCの比率が低かった。IFN-αはCD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)を刺激してCD38を産生させる。CD38は、その存在量がHIV-1疾患進行の予測因子となる表面タンパク質である。女性のT細胞では、男性のT細胞と比べて、HIV-1由来のTLR7/8リガンドまたは不活化ウイルスによる刺激後、CD38存在量がより大きく増加した。HIV-1ウイルス量で補正後、慢性HIV感染女性では、HIV感染男性のT細胞と比べて、CD8およびCD38陽性T細胞の比率が高かった。このように、女性におけるTLR7およびTLR8応答性の上昇は、血中のステロイドホルモンによって調節されている可能性があり、INF-αの分泌と細胞傷害性T細胞の蓄積を増加させ、疾患を進行させる。

A. Meier, J. J. Chang, E. S. Chan, R. B. Pollard, H. K. Sidhu, S. Kulkarni, T. F. Wen, R. J. Lindsay, L. Orellana, D. Mildvan, S. Bazner, H. Streeck, G. Alter, J. D. Lifson, M. Carrington, R. J. Bosch, G. K. Robbins, M. Altfeld, Sex differences in the Toll-like receptor-mediated response of plasmacytoid dendritic cells to HIV-1. Nat. Med. 15, 955-959 (2009). [PubMed]

N. R. Gough, When a Better Immune Response Is Bad. Sci. Signal. 2, ec280 (2009).

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