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シナプス可塑性
記憶に残るマイクロRNA

Synaptic Plasticity
Memorable microRNA

Editor's Choice

Sci. Signal., 29 September 2009
Vol. 2, Issue 90, p. ec317
[DOI: 10.1126/scisignal.290ec317]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : マイクロRNA(miR)と呼ばれる短鎖の阻害性RNA(約22ヌクレオチド)は、分化、代謝、および増殖に影響を及ぼすmRNAレベルでの調節階層を提供する。今回、Rajasethupathyらは、アメフラシ(Aplysia)における可塑性の一形態、すなわち、感覚ニューロンと運動ニューロンの間に生じる長期増強(LTF)の負の調節因子として、マイクロRNA miR-124を同定した(FischbachおよびCarewによる注釈参照)。小分子RNAのcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、著者らがアメフラシにおいて170のmiRNAを同定したところ、そのうちの13個を除くmiRNAがオルソログで保存されていた。9個のmiRNAは、アメフラシの脳および無損傷の感覚ニューロン−運動ニューロン回路の培養系において豊富に存在していた。miR-124は、脳に豊富に存在する数種類のmiRNAの一つであり、感覚ニューロンにのみ存在する。共培養系をセロトニンに反復曝露すると、LTFが生じ、miR-124の存在量が減少したが、miRNA前駆体の存在量は変化しなかった。一方、セロトニンに単回曝露すると、LTFは生じず、miR-124の存在量は変化しなかった。miR-124を増加させる処理はLTFを抑制し、miR-124を減少させる処理はLTFを増強した。セロトニンの反復投与に応答するmiR-124存在量の減少は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達の阻害薬により遮断されたが、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼCやプロテアソームの阻害薬によっては遮断されなかった。長期可塑性に関連がある転写因子CREB1の存在量は、miR-124が抑制されると増大し、レポーターアッセイでは、CREB1転写産物の3'-非転写領域におけるmiR-124共通領域がmiR-124の調節を担った。この研究から、シナプス可塑性における特定のマイクロRNAの役割が、その上流にある調節因子から下流の標的まで明らかになることによって、miR-124が関連する役割が、ニューロンの個性の特異化を越えて広がった。

P. Rajasethupathy, F. Fiumara, R. Sheridan, D. Betel. S. V. Puthanveettil, J. J. Russo, C. Sander, T. Tuschl, E. Kandel, Characterization of small RNAs in Aplysia reveals a role for miR-124 in constraining synaptic plasticity through CREB. Neuron 63, 803-817 (2009). [PubMed]

S. J. Fischbach, T. J. Carew, MicroRNAs in memory processing. Neuron 63, 714-716 (2009). [PubMed]

N. R. Gough, Memorable microRNA. Sci. Signal. 2, ec317 (2009).

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