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免疫学
リンパ節への特別送達

Immunology
Special Delivery to the Lymph Node

Editor's Choice

Sci. Signal., 3 November 2009
Vol. 2, Issue 95, p. ec352
[DOI: 10.1126/scisignal.295ec352]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 感染に対する適応免疫応答は、流入領域リンパ節(draining lymph nodes:DLN)へのリンパ球の補充が促進されてそこに保持され、その結果適切なリンパ球が患部末梢組織由来の抗原提示細胞に遭遇する確率が高まることによって引き起こされる。DLNは、この過程に適応するために急速に成長して管構造を再構築するが、そうなるためにDLNを刺激する末梢シグナルがどのようにしてDLNに伝達されるのかはわかっていない。Kunderらは、マスト細胞(mast cells:MC)から脱顆粒の際に放出される不溶性の顆粒状粒子が、末梢からDLNへ至る行程で、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)のようなシグナル伝達分子を保護するシャペロンとして作用する可能性を調べた。単離されたラット腹腔マスト細胞の走査型電子顕微鏡写真から、小分子MC活性化因子(コンパウンド48/80)への曝露によって安定な球状粒子が徐々に放出されることがわかった。精製された粒子のイムノブロット解析によって、これらの粒子のなかにTNFが存在することが示された。さらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)‐TNF融合タンパク質は、ラットのマスト細胞株またはマウスの骨髄由来MCに由来する粒子に局在していた。ラットの腸間膜およびマウスの足蹠のリンパ管の可視化によって、MC由来の粒子はリンパ系内を移動し、足蹠で活性化されたMC由来の粒子はDLN内で検出されることが示された。野生型マウスのMC由来の粒子をMC欠損マウスの足蹠に注射するとリンパ節の肥大化が促進されたが、TNF欠失マウス由来の粒子を注射してもリンパ節の肥大化は促進されなかった。MC由来の粒子は主にヘパリンプロテオグリカンと正電荷をもつプロテアーゼで構成され、リンパ節の肥大化の誘発には、合成ヘパリン‐キトサン粒子内にカプセル化されたTNFのほうが可溶性TNFよりも効果的であった。著者らは、MC由来の粒子が、シグナル伝達因子を炎症組織からDLNへ安全に供給するための機構を提供していると結論付けている。

C. A. Kunder, A. L. St. John, G. Li, K. W. Leong, B. Berwin, H. F. Staats, S. N. Abraham, Mast cell-derived particles deliver peripheral signals to remote lymph nodes. J. Exp. Med. 206, 2455-2467 (2009). [Abstract] [Full Text]

Citation: E. M. Adler, Special Delivery to the Lymph Node. Sci. Signal. 2, ec352 (2009).

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