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神経科学 
エンドサイトーシスされた受容体の記憶

Neuroscience
Memories of Receptors Endocytosed

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 December 2009
Vol. 2, Issue 99, p. ec382
[DOI: 10.1126/scisignal.299ec382]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : γアミノ酪酸受容体(GABAAR)のγ2サブユニットの突然変異によって、マウスの行動に顕著で特異的な変化が現れる。GABAARは抑制性シナプスで機能し、行動を変化させるValium®のようなベンゾジアゼピン系薬物の標的である。Tretterらは、γ2サブユニットに含まれる2ヵ所のチロシンリン酸化部位をフェニルアラニンに突然変異させることによって、リン酸化を阻害したγ2サブユニットのノックインマウスを作製した。この変異受容体を発現するヘテロ接合体マウスでは、海馬、特にCA3領域細胞の細胞膜でGABAARの蓄積が増大していた。これは、クラスリンアダプタータンパク質であるAP2と変異受容体との会合が低下したために、受容体のエンドサイトーシスが変化したことを反映していると思われる。受容体サブユニットを含む斑点を免疫蛍光共焦点顕微鏡で評価すると、CA3領域の抑制性シナプスが大きくなっていた。筆者らは突然変異マウスの物体認知行動について検討した。ヘテロ接合体マウスは野生型マウスと同様に、過去に探索した物体を認識することはできたが、知っている物体の空間的位置の変化は認識できなかった。正常マウスの場合、物体を移動させると(同じ場所にとどまっている既知の他の物体よりも)その物体を優先的に探索した。しかしGABAAR変異マウスは物体の位置の変化を認識しないようであり、移動した物体と移動しない物体を等しく探索した。薬物によるこれら受容体の調節が行動を変化させ得ることをわれわれは知っているが、神経シグナルに応答する受容体の正常な調節がどのように作動するかについてはあまり情報がない、と筆者らは指摘している。著者らの結果は、リン酸化によって制御される受容体の輸送がマウスの学習行動の重要な要素であることを示唆する。

V. Tretter, R. Revilla-Sanchez, C. Houston, M. Terunuma, R. Havekes, C. Florian, R. Jurd, M. Vithlani, G. Michels, A. Couve, W. Sieghart, N. Brandon, T. Abel, T. G. Smart, S. J. Moss, Deficits in spatial memory correlate with modified γ-aminobutyric acid type A receptor tyrosine phosphorylation in the hippocampus. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106, 20039-20044 (2009). [Abstract] [Full Text]

L. B. Ray, Memories of Receptors Endocytosed. Sci. Signal. 2, ec382 (2009).

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