• ホーム
  • 神経科学 シグナル伝達を内側から阻止する

神経科学
シグナル伝達を内側から阻止する

Neuroscience
Signaling Stop from the Inside

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 February 2010
Vol. 3, Issue 107, p. ec36
[DOI: 10.1126/scisignal.3107ec36]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Nogo-Aは、強力な神経突起伸長阻害因子ファミリーのメンバーである。その活性領域のひとつがC末端Nogo-66ドメインであり、このドメイ ンはこのファミリーの他の2つのメンバーと共通しており、細胞表面受容体のNgRと結合する。NogoΔ20と呼ばれる中心領域はNogo-Aに特異的で あり、NgRとは無関係に阻害活性を示す。Josetらは、NogoΔ20を神経細胞株(PC12細胞)、培養海馬細胞、または培養後根神経節(DRG) ニューロンに添加すると、NogoΔ20がEps15相同ドメイン含有タンパク質(EHD)のひとつであるPincherの活性を必要とするマクロピノサ イトーシスの機構を介して細胞内に取り込まれることを示した。PC12細胞においてクラスリン依存性エンドサイトーシスあるいはカベオリン依存性エンドサ イトーシスを阻害しても、NogoΔ20の細胞内移行は阻止されなかった。NogoΔ20で処理された海馬ニューロンにおいて優性阻害型 (dominant-negative)のPincherを過剰発現させると、成長円錐の崩壊が抑制された。優性阻害型Pincherを過剰発現する小脳 顆粒ニューロンをNogoΔ20存在下に置くと、トランスフェクションされていない細胞をNogoΔ20に曝露させた場合に比べて、より長い神経突起が認 められた。NogoΔ20はRhoA活性を亢進することが知られているが、PC12細胞において優性阻害型Pincherを過剰発現させると、 NogoΔ20によって亢進されるRhoファミリーメンバーの活性化が抑制された。NogoΔ20は微小管依存性の逆行輸送を必要とする過程を介して培養 DRGニューロンの細胞体へと送達され、この逆行輸送は優性阻害型Pincherの過剰発現によって遮断された。DRG神経突起におけるRho活性は NogoΔ20処理の直後(30分後)に亢進し、その後(6時間後)の時点で、上昇したRho活性が細胞体で顕著に認められた。神経突起において、活性型 のRhoはNogoΔ20陽性小胞と共局在していたことから、著者らは、活性型RhoはNogoΔ20シグナル伝達エンドソーム(NogoΔ20シグナロ ソーム)の一部として細胞体へ送達されると提唱している。この仮説を支持するように、NogoΔ20に曝露させたPC12細胞由来のエンドソーム画分で は、未処理の細胞由来のものに比べてより大量の活性型Rhoが認められた。

N. R. Gough, Signaling Stop from the Inside. Sci. Signal. 3, ec36 (2010).

A. Joset, D. A. Dodd, S. Halegoua, M. E. Schwab, Pincher-generated Nogo-A endosomes mediate growth cone collapse and retrograde signaling. J. Cell Biol. 188, 271-285 (2010). [Abstract] [Full Text]

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2010年2月2日号

Editor's Choice

神経科学
シグナル伝達を内側から阻止する

Research Article

非コードRNAのGas5は増殖停止および飢餓と関連するグルココルチコイド受容体のリプレッサーである

Meeting Reports

BMP:骨形成タンパク質から体形成タンパク質へ

最新のEditor's Choice記事

2024年2月27日号

ccRCCでTBK1を遮断する方法

2024年2月20日号

密猟者がT細胞内で森の番人に転身した

2024年2月13日号

RNAが厄介な状況を生み出す

2024年2月6日号

細胞外WNT伝達分子

2024年1月30日号