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生理学
筋活動と筋の成長
Physiology
How Do Muscles Know to Grow?
Sci. Signal., 16 February 2010
Vol. 3, Issue 109, p. ec50
[DOI: 10.1126/scisignal.3109ec50]
Elizabeth M. Adler
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
運動は筋肉の成長を促し、その一方で不活動は筋委縮に至らしめる。筋萎縮は、直接の電気刺激によって対抗することが可能な過程である。ニューロンにおいて電位依存性の転写の変化にL型Ca2+チャネルが関連することに注目して、Pi?tri-Rouxelらは、筋細胞L型Ca2+チャ ネル(ジヒドロピリジン受容体(DHPR)として知られる)のα1Sサブユニットの筋活動と筋の成長を結びつける役割について調べた。α1Sのプレ mRNAスプライシングを乱すように(エクソン16をスキップしてmRNAリーディングフレームをシフトさせるように)設計されたU7 snRNAキメラを筋肉内に注射すると、マウス前脛骨筋においてスキップされないα1S mRNAの量が、注射後2ヵ月までに顕著に減少した。注射から6ヵ月後にもα1Sタンパク質の減少が認められ、同時に線維径の縮小によって筋量も著明に減 少し、線維症が亢進した。さらに解析すると、α1Sのノックダウンによって、ニューロン内の一酸化窒素シンターゼ(nNOS)の量が低下し、それに伴って nNOSが筋鞘から細胞質に再分布し、転写因子FoxO3Aが核に移行することが明らかになった(不活動に派生する筋萎縮でみられる変化と一致してい る)。またα1Sのノックダウンによって、オートファジーと関連する遺伝子をコードするmRNAの蓄積が増え、オートファゴソームの発現が誘導された。筋 のα1Sは、横行小管(T管)に沿ってCa2+チャネルとして機能し、三つ組構造では興奮収縮連関の電位センサーとして機能し、筋 鞘にも僅かに局在している。著者らは、制御性の短趾屈筋の三次元共焦点解析によってこの分布を確認したが、興味深いことに、α1Sノックダウンによってこ のマイナーな筋鞘画分のみが特異的に消失していた。そこで筆者らは、このα1S筋鞘画分は、筋肉の同化状態または異化状態と筋活動を共役させるセンサーの 役割を果たしているかもしれないと提案している。
F. Pi?tri-Rouxel, C. Gentil, S. Vassilopoulos, D. Baas, E. Mouisel, A. Ferry, A. Vignaud, C. Hourd?, I. Marty, L. Schaeffer, T. Voit, L. Garcia, DHPR α1S subunit controls skeletal muscle mass and morphogenesis. EMBO J. 29, 643-654 (2010). [PubMed]
E. M. Adler, How Do Muscles Know to Grow? Sci. Signal. 3, ec50 (2010).