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生理学
高血圧を減らすためのスパイシーな食事

Physiology
Spicy Diet to Reduce Hypertension

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 August 2010
Vol. 3, Issue 134, p. ec241
[DOI: 10.1126/scisignal.3134ec241]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

トウガラシを辛く感じさせる化学物質は、カプサイシンと呼ばれており、TRPV1と呼ばれる一過性受容体電位ファミリーのカチオンチャネルを活性化 させることで、カルシウムイオンが細胞に流入することを可能にする。感覚神経細胞におけるTRPV1を介したカプサイシンの作用は、痛みを引き起こし、皮 膚に局所的に塗布すると、感覚神経の脱感作を通して無痛覚が生じる(Sessa参照)。今回、Yangらは、食事から摂取するカプサイシンが、食事の一定 の割合を占めた場合、血圧を低下させるのではないかという証拠を提供する。最初に、著者らは、マウスの動脈内皮細胞にTRPV1が存在することを確認し た。次に、カプサイシンがチャネルを活性化し、それらの細胞の細胞内カルシウム濃度を増加させることを確認した。単離したマウス内皮細胞をカプサイシンに 急性曝露すると、リン酸化された内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の量、プロテインキナーゼA(PKA)の活性、およびNO産生の増大が引き起こされ た。これらの反応は、TRPV1を欠失したマウスの内皮細胞では認められず、TRPV1チャネル、NOS、またはPKAの薬理学的阻害、あるいはカルシウ ムキレート化によって遮断された。カプサイシンを添加した食餌を数ヵ月間与えたマウスの腸間膜動脈を調べたところ、TRPV1と、リン酸化されたeNOS およびPKAの存在量が増加していることが明らかになった。さらに、6ヵ月間カプサイシンを食餌から摂取させると、単離したマウス腸間膜動脈のアセチルコ リンに応答する弛緩反応が増加した。自然発生高血圧ラットは、血圧低下を示し、これは5ヵ月後の時点で有意であった。これらのラットの腸間膜動脈では、 TRPV1、リン酸化PKA、リン酸化eNOSの量が増加していた。また、通常食を与えた未処置ラットと比較して、循環血中のNO代謝産物が増加してい た。血圧に対するカプサイシンの作用のどれ程が脈管構造への直接作用によるものか、どれ程が神経系への作用を通して媒介されたものであるかは明らかでない が、これらの結果から、TRPV1を標的にすることは、高血圧の治療にとって利益があるかもしれないと示唆される。

D. Yang, Z. Luo, S. Ma, W. T. Wong, L. Ma, J. Zhong, H. He, Z. Zhao, T. Cao, Z. Yan, D. Liu, W. J. Arendshorst, Y. Huang. M. Tepel, Z. Zhu, Activation of TRPV1 by dietary capsaicin improves endothelium-dependent vasorelaxation and prevents hypertension.Cell Metab. 12, 130-141 (2010). [PubMed]

W. C. Sessa, A new way to lower blood pressure: Pass the chili peppers please! Cell Metab. 12, 109-110 (2010). [PubMed]

N. R. Gough, Spicy Diet to Reduce Hypertension. Sci. Signal. 3, ec241 (2010).

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2010年8月10日号

Editor's Choice

生理学
高血圧を減らすためのスパイシーな食事

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