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がん生物学
ストレス誘導性の血管新生

Cancer Biology
Stress-Induced Angiogenesis

Editor's Choice

Sci. Signal., 7 September 2010
Vol. 3, Issue 138, p. ec270
[DOI: 10.1126/scisignal.3138ec270]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

グリオーマ(神経膠腫)はもっとも一般的なタイプの脳腫瘍であり、増殖性、血管新生活性、侵潤性が高いことが特徴である。グリオーマの治療に血管新 生を阻害する療法が用いられるが、侵潤性の細胞行動への表現型の変化が誘導される可能性がある。イノシトール要求性酵素1(IRE1)は、小胞体に局在 し、低酸素などのストレスに対する転写応答を媒介するタンパク質であり、以前はがん細胞における低酸素応答と関連付けられていた。Aufらは、IRE1活 性の阻害がin vivoでのグリオーマの発達および進行に与える影響について検討した。IRE1のドミナントネガティブ型を発現しているU87細胞(U87dn)を頭蓋 内に移植した動物は、対照U87細胞(U87ctrl)または野生型IRE1を発現しているU87細胞(U87wt)を移植した動物と比較して、腫瘍が小 さく、長く生存した。U87dn腫瘍に由来する侵潤性細胞は、既存の血管を選んで、それに沿って移動したが、U87ctrl腫瘍に由来する細胞はそのよう な傾向を示さなかった。U87ctrl腫瘍と比較して、U87dn腫瘍は、総血管密度および機能血管密度が低く、インターロイキン-1β(IL-1β)、 IL-6、IL-8、および血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)などの血管新生因子の産生濃度が低かった。ニワトリ絨毛尿膜に移植されたU87wtお よびU87ctrl細胞は、血管が新生した非侵潤性の腫瘍になったのに対して、U87dn細胞から発達した腫瘍は、サイズが小さく、血管が新生せず、侵潤 性で、IL-6およびVEGF-Aの産生量が少なかった。著者らは、特に虚血性の腫瘍微小環境において、IRE1活性は血管新生および腫瘍進行を促進する と考える。

G. Auf, A. Jabouille, S. Guerit, R. Pineau, M. Delugin, M. Bouchecareilh, N. Magnin, A. Favereaux, M. Maitre, T. Gaiser, A. von Deimling, M. Czabanka, P. Vajkoczy, E. Chevet, A. Bikfalvi, M. Moenner, Inositol-requiring enzyme 1α is a key regulator of angiogenesis and invasion in malignant glioma. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107, 15553-15558 (2010). [Abstract] [Full Text]

W. Wong, Stress-Induced Angiogenesis. Sci. Signal. 3, ec270 (2010).

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2010年9月7日号

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