DNA損傷応答
修復と保護

DNA Damage Response
Repair and Protect

Editor's Choice

Sci. Signal., 8 February 2011
Vol. 4, Issue 159, p. ec35
[DOI: 10.1126/scisignal.4159ec35]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

キナーゼATMの活性を低下させる変異は、がんに対する感受性、免疫不全、神経障害などの症状を呈する毛細血管拡張性運動失調症(A-T)を引き起こす。ATMを欠損するマウスの小脳ニューロンには多くの抗酸化酵素に必要な補因子であるNADPHが少量しか認められないこと、およびヒトA-Tリンパ芽球は野生型の細胞と比べてグルタチオン枯渇からの回復が遅いことに注目し、Cosentinoらは、培養哺乳類細胞とアフリカツメガエル(Xenopus)卵抽出物を用いて、NADPH[グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)を介する]とヌクレオチドを生成するペントースリン酸経路(PPP)とATMの活性が関連するかどうかについて検討した。転写装置を欠くアフリカツメガエル抽出系に二本鎖切断(DSB)を有するDNAを添加すると、あるいは培養ヒト細胞に放射線を照射すると、G6PDの活性とNADPHの生成が増大した。この増大はATM活性の阻害によって阻止された。アフリカツメガエル抽出物へのDSB添加またはヒト培養細胞への照射によって、G6PD活性の既知の刺激因子である熱ショックタンパク質27(Hsp27)のATM依存性リン酸化が刺激されるとともに、G6PDとの相互作用が促進された。照射によるG6PDの活性化は、Hsp27のノックダウンによって阻止された。G6PDを欠く細胞または抽出物では、DNA修復の低下と活性酸素種(ROS)生成の増大が認められた。照射ヒトリンパ芽球において標識PPP中間体のRNAへの取込みを生化学的に解析したところ、PPPを通る代謝流束の増大が示された。本研究は、A-T患者の小脳ニューロンにおける多量の酸化的損傷と抗酸化能の低下について可能性のある説明を与えるだけでなく、DNA修復と酸化バランス維持にとってきわめて重要な代謝経路にATMを結び付けるものである。

C. Cosentino, D. Grieco, V. Costanzo, ATM activates the pentose phosphate pathway promoting anti-oxidant defence and DNA repair. EMBO J. 30, 546-555 (2011). [PubMed]

N. R. Gough, Repair and Protect. Sci. Signal. 4, ec35 (2011).

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2011年2月8日号

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