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mTORシグナル伝達
アミノ酸刺激に必要な補助因子
mTOR Signaling
Cofactor for Amino Acid Stimulation
Sci. Signal., 22 February 2011
Vol. 4, Issue 161, p. ec53
[DOI: 10.1126/scisignal.4161ec53]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1)は、mTORキナーゼと制御サブユニットraptorから成り、アミノ酸などの栄養素によって活性化される。イノシトールポリリン酸マルチキナーゼ(Inositol polyphosphate multikinase:IPMK)は、イノシトールポリリン酸Ins(1,4,5,6)P4およびIns(1,3,4,5,6)P5を生成するが、酵母においてアルギニンに対する応答を仲介していることから、KimらはmTORC1シグナル伝達におけるIPMKの役割を調べるようになった。野生型のマウス胚性線維芽細胞(mouse embryo fibroblast:MEF)に比べて、IPMK欠損型MEFでは、アルギニン、ロイシン、または全アミノ酸による刺激に応答するmTORC1シグナル伝達の低下(下流基質S6K[ribosomal protein S6 kinase、リボソームタンパク質S6キナーゼ]のリン酸化によって評価)がみられたほか、ロイシンに応答する細胞サイズの増大も減弱された。ロイシンに応答するS6Kのリン酸化の増加は、IPMKの触媒活性を必要としなかった。その代わりにIPMKは、mTORとraptorおよびGTPアーゼRag(アミノ酸によるmTORC1の活性化を仲介する)との相互作用を安定化するようである。ヒトIPMKは、1〜60番目のアミノ酸を包むN末端領域でmTORと、C末端領域でraptorと相互作用した。ヒトIPMKの1〜60番目のアミノ酸と緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)で構成された融合タンパク質を過剰発現させたあとにロイシンで刺激すると、mTORと会合するraptorの量が減少し、S6Kのリン酸化によって評価されるmTORC1シグナル伝達が低下した。IPMK欠損型MEFで損なわれていたmTOR-raptor相互作用、mTORC1シグナル伝達、細胞サイズの増大が野生型マウスIPMKの再構成によって回復したが、mTOR結合部位を欠損させた変異型マウスIPMKでは回復しなかった。このように、IPMKはmTORC1複合体を安定化させることによって、アミノ酸刺激に対する応答を高めている。
S. Kim, S. F. Kim, D. Maag, M. J. Maxwell, A. C. Resnick, K. R. Juluri, A. Chakraborty, M. A. Koldobskiy, S. H. Cha, R. Barrow, A. M. Snowman, S. H. Snyder, Amino acid signaling to mTOR mediated by inositol polyphosphate multikinase. Cell Metab. 13, 215-221 (2011). [PubMed]
W. Wong, Cofactor for Amino Acid Stimulation. Sci. Signal. 4, ec53 (2011).