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がん
好ましくない隣人を排除
Cancer
Getting Rid of Unwanted Neighbors
Sci. Signal., 22 March 2011
Vol. 4, Issue 165, p. ec82
[DOI: 10.1126/scisignal.4165ec82]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
ショウジョウバエ(Drosophila)成虫の上皮では、scribやdlgなどの悪性腫瘍抑制遺伝子に変異を有する細胞は、JNKおよび周辺の野生型細胞の存在に依存する様式で細胞死する。Ohsawaらは、正常組織による腫瘍細胞の除去を媒介するシグナル伝達経路および機構について検討した。誘導性のscribまたはdlgのクローンを有する触角・複眼原基では、変異クローンおよび周辺の野生型細胞において、JNKシグナル伝達がEiger(細胞表面の腫瘍壊死因子リガンド)によって活性化された。周辺細胞におけるJNK活性化は、変異細胞におけるJNK活性化と無関係であった。成虫組織全体からEigerを除去すると、scribクローンの過成長が起こった。Eiger-JNKシグナル伝達は、変異クローンおよび周辺の野生型細胞において、PVR(PDGFおよびVEGF受容体のショウジョウバエ相同分子種)のmRNAおよびタンパク質存在量の増加を引き起こした。scribクローンの除去は、周辺細胞におけるRNA干渉によるPVRの発現抑制によって減弱され、周辺細胞におけるPVRの過剰発現によって増強された。変異細胞は、周辺の野生型細胞によって貪食された。これは、Ced-12ホモログのELMO(engulfment and cell motility)とCed-5およびDOCK180ホモログのMbc(myoblast city)を必要とする過程であった。ELMOおよびMbcは、GTPアーゼRacに対してグアニンヌクレオチド交換因子として集合的に作用する。このように、ショウジョウバエ上皮におけるJNKシグナル伝達経路の活性化は、周辺の野生型細胞による腫瘍細胞の貪食を促進する。
S. Ohsawa, K. Sugimura, K. Takino, T. Xu, A. Miyawaki, T. Igaki, Elimination of oncogenic neighbors by JNK-mediated engulfment in Drosophila. Dev. Cell 20, 315-328 (2011). [PubMed]
W. Wong, Getting Rid of Unwanted Neighbors. Sci. Signal. 4, ec82 (2011).