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宿主と微生物の相互作用
インフルエンザに抗菌薬は?

Host-Microbe Interactions
Why Not Take Antibiotics for the Flu?

Editor's Choice

Sci. Signal., 5 April 2011
Vol. 4, Issue 167, p. ec94
[DOI: 10.1126/scisignal.4167ec94]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

消化管内の免疫ホメオスタシスを維持する上での共生細菌の役割はよく知られている。さらに、腸内微生物叢の特異的組成はさまざまな病態生理学的状況の発生に影響を及ぼすかも知れないと考え、4週間の抗菌薬併用治療がマウスの共生細菌の組成を変化させることを確認し、本治療がA/PR8インフルエンザウイルスの鼻腔内感染に対する免疫応答に及ぼす影響について調べた。無処置対照に比べて抗菌薬投与マウスでは、ウイルス粒子特異的な抗体価もT細胞応答(インターフェロンγ産生および細胞傷害性T細胞数)も低く、肺ウイルス価は高かった。個々の抗菌薬の影響について解析したところ、グラム陽性腸内細菌を枯渇させる(鼻内細菌は枯渇させない)ネオマイシンがこの免疫応答抑制に関連していることがわかった。インフルエンザの呼吸器感染に対する適応免疫応答はインフラマソーム(inflammasome)[インターロイキン1β(IL-1β)やIL-18などの炎症性サイトカインのカスパーゼ1依存的なプロセシングと分泌に関与する多タンパク質複合体]の活性化に依存しており、抗菌薬治療はインフラマソームを必要としない免疫応答を抑制しなかった。Toll様受容体アゴニストの局所(鼻腔内)接種または遠位(直腸内)接種によって、インフルエンザウイルスに対する応答が回復したのに対して、制御性T細胞の枯渇によっては回復しなかった。IL-1βの分泌はインフラマソームの活性化だけでなく、IL-1β自体の転写とインフラマソーム成分NLRP3の転写を刺激するプライミングシグナルにも依存している。抗菌薬治療は、成熟IL-1βの感染後の分泌だけでなく、プロIL-1β、プロIL-18およびNLRP3をコードするmRNAの存在量量を感染前から減少させた。このことは、共生細菌が構成的なプライミングシグナルを提供することを示唆する。また、抗菌薬は、呼吸器の樹状細胞のリンパ節への移動を抑制することによって、T細胞の活性化を抑制する。これはカスパーゼ1欠損マウスにおいても認められる。以上より、共生細菌は、抗菌薬による微生物叢の破壊で失われた呼吸器感染に対するインフラマソーム依存性免疫応答に必要なシグナルを与えると考えられる。

T. Ichinohe, I. K. Pang, Y. Kumamoto, D. R. Peaper, J. H. Ho, T. S. Murray, A. Iwasaki, Microbiota regulates immune defense against respiratory tract influenza A virus infection. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 5354-5359 (2011). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Why Not Take Antibiotics for the Flu? Sci. Signal. 4, ec94 (2011).

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2011年4月5日号

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