- ホーム
- 再生 プラナリア尾部の切断と再生
再生
プラナリア尾部の切断と再生
Regeneration
Snips and Tales of Planarian Tails
Sci. Signal., 17 May 2011
Vol. 4, Issue 173, p. ec139
[DOI: 10.1126/scisignal.4173ec139]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
胚における体軸の確立については多くのことが知られているが、再生組織における極性の確立についてはあまりわかっていない。プラナリアは顕著な再生能を示し、欠損した頭部や尾部、またはそれら両方を同時に主体軸に関して正しい方向に再生することができる。Wntシグナル伝達は尾部形成を促進するのに対して、Wntシグナル伝達の抑制因子は頭部の形成を促進する。wnt1の発現は創部の前後で誘導されるが、後向きの創部のみが尾を再生する。PetersenとReddienは、前向きの創部におけるWntシグナル伝達がNotumによって抑制されることを報告した。Notumとはα/β-ヒドロラーゼであり、ショウジョウバエにおいて、グリピカンがWntシグナル伝達を促進するために必要なグリコシルホスファチジルイノシトール・アンカーを切断することによってWntシグナル伝達を抑制する。notumは前後軸に沿ったどのような位置でも、前向きの創部では発現されるが、後向きの創部では発現されなかった。このことは切断によって組織を切り離してしまった場合でも、切り込みを入れただけで組織を切り離さなかった場合でも生じる。前後軸に対して垂直に、互いに近い位置に2箇所の切断を加えた場合には、この2つの前向きの創縁のうち、より後部の創縁で多くのnotumが発現された。このことは、もう一方の前向きの創傷では、後向きの創傷によってnotumの発現が抑制されたことを示唆する。RNA干渉(RNAi)によってnotumの発現を低下させると、頭部再生能は阻害されたが、尾部再生能は阻害されなかった。notum RNAi処理したプラナリアで再生された前方の組織は、尾部の特性、すなわち後方の腸の形状や光受容体/頭神経節の欠失などを示した。Wnt1とWntシグナル伝達エフェクターであるβカテニンの活性を必要とするwntP-2の発現は、後向きの創部では増大したが、前向きの創部では増大しなかった。遺伝学的実験から、notumの発現はWnt1とβカテニンに依存し、NotumはWntシグナル伝達のフィードバック抑制因子として働くことが示唆された。後向きの創部でnotumの発現を抑制する因子は特定されていない。ショウジョウバエ以外でのNotumの機能は解明されていないが、イソギンチャクからヒトにいたるまでNotumが保存されていること、また生物種全体にわたってWntシグナル伝達が再生に広く関わっていることから、再生の極性を決定するうえでNotumは比較的普遍的な役割を果たしている可能性がある。SlackによるPerspectiveでは、これらの結果を組織再生という幅広い背景の中で考察し、新生細胞(すなわち成体の幹細胞と同等なプラナリアの細胞)の多能性を実証した、付随するWagnerらの論文からの新たな所見について議論している。
C. P. Petersen, P. W. Reddien, Polarized notum activation at wounds inhibits Wnt function to promote planarian head regeneration. Science 332, 852-855 (2011). [Abstract] [Full Text]
D. E. Wagner, I. E. Wang, P. W. Reddien, Clonogenic neoblasts are pluripotent adult stem cells that underlie planarian regeneration. Science 332, 811-816 (2011). [Abstract] [Full Text]
J. M. W. Slack, Planarian pluripotency. Science 332, 799-800 (2011). [Abstract] [Full Text]
A. M. VanHook, Snips and Tales of Planarian Tails. Sci. Signal. 4, ec139 (2011)