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細胞サイズ
アクチンと(Aktではなく)アクチング

Cell Size
Acting with Actin (But Not Akt)

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 June 2011
Vol. 4, Issue 178, p. ec169
[DOI: 10.1126/scisignal.4178ec169]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

DNA損傷後の細胞周期停止は、典型的な場合には同時に細胞サイズの停止を伴う。Kimらは、がんが異常な細胞増殖だけではなく細胞サイズの増大も伴うこと、また細胞サイズの調節および放射線照射後の細胞サイズの停止に腫瘍抑制因子PTENの関与が示唆されていることに注目し、細胞サイズチェックポイント機構におけるPTENの役割を探った。放射線照射と同様に、トポイソメラーゼIIの阻害薬ドキソルビシンおよびエトポシドも、HCT116ヒト結腸直腸がん細胞においてPTENの有(HCT116 PTEN+/+)無(HCT116 PTEN-/-)にかかわらず、細胞周期停止を惹起した。HCT116 PTEN+/+細胞は成長も停止したのに対して、HCT116 PTEN-/-細胞は肥大し続け、PTEN+/+細胞よりもかなり大きな体積で停止した。電離放射線曝露後の細胞サイズ停止は、野生型PTENによってレスキューされたが、脂質ホスファターゼ活性が欠損した変異型ではレスキューされなかった。PTENはホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達に拮抗し、HCT116細胞はPI3K触媒サブユニットPI3KCAの活性化突然変異を有する。しかし、HCT116細胞において野生型または変異型PI3KCAの有無の条件で解析したところ、細胞サイズチェックポイントにおけるPI3KCAの関連を示すことはできなかった。さらに、突然変異解析によって、細胞サイズチェックポイントにおけるPTENの役割は、そのAkt(PI3Kの下流で活性化されるキナーゼ)リン酸化を低下させる能力とは無関係であり、Aktを阻害しても、PTEN-/-細胞のサイズ制御は回復しなかった。内因性エピトープ標識によるFLAG標識PTEN産生細胞の作製と質量分析を併用することによって、著者らはアクチンおよびアクチン結合タンパク質ゲルゾリン、EPLIN(腫瘍で欠失する上皮タンパク質)がPTENと相互作用することを見いだした。さらに、PTENはアクチン、ゲルゾリン、およびEPLINと免疫共沈降し、免疫蛍光解析によって、GFP-PTENは細胞の膜でアクチンと共局在することが明らかになった。アクチン再構築の薬理学的阻害は、HCT116 PTEN-/-細胞のサイズ停止に影響を及ぼすことなく、HCT116 PTEN+/+細胞の電離放射線曝露後の細胞サイズ停止を無効にした。以上より、著者らは、PTENは、Aktのリン酸化調節とは無関係のアクチン再構築が関与する機構を介してDNA損傷による細胞増殖停止を調節すると結論している。

J.-S. Kim, X. Xu, H. Li, D. Solomon, W. S. Lane, T. Jin, T. Waldman, Mechanistic analysis of a DNA damage-induced, PTEN-dependent size checkpoint in human cells. Mol. Cell. Biol. 31, 2756-2771 (2011). [PubMed]

E. M. Adler, Acting with Actin (But Not Akt). Sci. Signal. 4, ec169 (2011).

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2011年6月21日号

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