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免疫学
マグネシウムは必要か?

Immunology
Magnesium Required?

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 August 2011
Vol. 4, Issue 184, p. ec212
[DOI: 10.1126/scisignal.4184ec212]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

免疫系の遺伝的異常によって感染症にかかりやすくなるといった稀な原発性免疫不全症の患者を研究することによって、以前はよくわからなかった免疫調節の側面が発見されることがしばしばある(WuとVeilletteによるcommentary参照)。Liらは、CD4+T細胞数の減少、エプスタイン・バー・ウイルスによる慢性感染症、およびT細胞受容体(TCR)シグナル伝達の欠損(Ca2+流入を含む)を特徴とする免疫不全症の兄弟二人について調べた。遺伝子解析から、この兄弟にはX染色体に欠損があること、すなわち、細胞膜に存在するマグネシウム輸送タンパク質(MagT1)をコードする遺伝子「MAGT1」の一部が欠損していることを明らかになった。正常なドナーのT細胞ではTCR刺激によりMg2+とCa2+の流入が起こるが、この免疫不全患者のT細胞はTCR依存的Mg2+流入を示さず、Ca2+流入が損なわれていた。細胞外Mg2+が存在しない条件で正常T細胞のTCRを刺激するとCa2+流入が減少したが、細胞外Ca2+が存在しない条件でTCRを刺激しても、Mg2+流入に影響はなかった。この所見と従来のデータとを組み合わせると、Ca2+流入はMg2+流入の二次的なものであることが示唆された。低分子干渉RNA(siRNA)による正常T細胞のMagT1のノックダウンは、免疫不全患者のT細胞で見られるTCR刺激性のMg2+とCa2+流入の異常を再現した。逆に、免疫不全患者のT細胞に全長のMagT1を発現させると、TCR刺激に対するMg2+流入が回復し、Ca2+流入が増大した。健常者と免疫不全患者のT細胞で調べたTCR近位シグナル伝達イベントのうち、TCR刺激性Ca2+流入に必須なホスホリパーゼCγ1(PLC-γ1)の活性化のみが、免疫不全T細胞で欠損していた。さらにPLC-γ1とは無関係なTCR活性化の下流のイベントは、MagT1欠損によって影響を受けなかった。TCR刺激がMagT1を活性化し、Mg2+流入によってPLC-γ1の活性化が起こる機構は不明だが、今回のデータは、Mg2+がT細胞活性化のセカンドメッセンジャーとして働いている可能性を示唆する。

F.-Y. Li, B. Chaigne-Delalande, C. Kanellopoulou, J. C. Davis, H. F. Matthews, D. C. Douek, J. I. Cohen, G. Uzel, H. C. Su, M. J. Lenardo, Second messenger role for Mg2+ revealed by human T-cell immunodeficiency. Nature 475, 471-476 (2011). [PubMed]

N. Wu, A. Veillette, Magnesium in a signalling role. Nature 475, 462-463 (2011). [PubMed] 

J. F. Foley, Magnesium Required? Sci. Signal. 4, ec212 (2011).

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