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細胞生物学
Yapに対するアクチンの影響
Cell Biology
Actin on Yap
Sci. Signal., 30 August 2011
Vol. 4, Issue 188, p. ec236
[DOI: 10.1126/scisignal.4188ec236]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
多くの細胞種でHippo経路がその成長と増殖を制御していることは明らかだが、培養細胞において細胞密度がどのようにHippoシグナル伝達を調節し、増殖の接触阻止を媒介するのかはまだ解明されていない。低い細胞密度では、Hippoを介するシグナル伝達は弱く、転写コアクチベーターであるYap(Tead転写因子と協調して増殖を促す)が核内に蓄積する。一方、コンフルエントな培養では、Hippoを介するシグナル伝達が亢進し、Yapのリン酸化と核からの排出が起こる。Wadaらは、アクチンのストレスファイバーがHippoを介するシグナル伝達を抑制し、低細胞密度での細胞増殖を維持すると報告した。この著者らは、様々な面積の微小領域に個々の細胞を播種することによって細胞の形状を操作した結果、伸展して多くのストレスファイバーを有するNIH3T3(マウス線維芽)細胞ではYapは主に核内に局在するが、表面積が小さく、ストレスファイバーも少ない球状細胞ではYapは細胞質内に局在することを見いだした。懸濁状態で短時間細胞を培養したとき、もしくはアクチン脱重合剤であるサイトカラシンD(CytoD)でストレスファイバーを破壊すると、Yapの核蓄積は減少したのに対して、微小管を破壊してもYapの分布には影響がなかった。Hippoの下流で働き、細胞質へのYapの滞留を促すLats2キナーゼの量を、RNA干渉によって減少させると、CytoD誘導性のYapの細胞質蓄積が抑制された。このことは、ストレスファイバーがLats2のレベル、もしくはその上流でYapの局在に影響を及ぼすことを示唆する。Lats2によってリン酸化されない突然変異型Yapは、細胞形態やストレスファイバーの有無にかかわらず核に局在したが、Lat2を介するYapのリン酸化のみでは、核からの排出には十分ではなかった。Yapの核からの排出に他の調節因子が必要であることと一致するように、低密度でプレート上に接着している細胞に比べて、高密度の細胞、剥離した細胞、およびCytoDで処理した細胞では、Yapはさらに高度にリン酸化されていた。以前の研究から、接触阻止を介するHippoシグナル伝達の調節に細胞間接触が重要であることが実証されたが、細胞の形態もHippo経路に作用するようである。
K. Wada, K. Itoga, T. Okano, S. Yonemura, H. Sasaki, Hippo pathway regulation by cell morphology and stress fibers. Development 138, 3907-3914 (2011). [Abstract] [Full Text]
A. M. VanHook, Actin on Yap. Sci. Signal. 4, ec236 (2011).