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宿主と病原菌の相互作用
レジオネラによる修飾

Host-Pathogen Interactions
Modified by Legionella

Editor's Choice

Sci. Signal., 6 September 2011
Vol. 4, Issue 189, p. ec244
[DOI: 10.1126/scisignal.4189ec244]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

細菌性病原体のLegionella pneumophila(レジオネラ・ニューモフィラ菌)は、感染した宿主細胞の液胞内で複製する(ItzenとGoody参照)。この液胞を形成して維持するために、この細菌は、小胞体由来の小胞の輸送を調節する低分子量グアノシン・トリホスファターゼ(GTPアーゼ)Rab1を標的として、メンブレントラフィックがうまく機能しないようにする。以前の研究によって、レジオネラのエフェクタータンパク質DrrAは、Rab1に対するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として作用することによって、このGTPaseを活性化することが明らかにされていた。さらに、DrrAは、Rab1のTyr77にアデノシン5'-一リン酸(AMP)を付加することによって、Rab1の活性化状態を維持する。この翻訳後修飾はAMP化(ampylation)と呼ばれる。この修飾にはDrrAのFIC(cAMP誘発性フィラメンテーション)ドメインが必要であり、この修飾によってRab1はGTPアーゼ活性化タンパク質に会合できなくなる。Mukherjeeらは、レジオネラに感染中には、Rab1はAMP化チロシン残基に隣接するセリン残基にもさらに翻訳後修飾を受けることを明らかにした。レジオネラタンパク質のAnkXは、Ser76にホスホコリンを付加し、この過程にも機能的なFICドメインが必要であった。Rab1ファミリーのメンバーであり、初期エンドソームからの積み荷タンパク質の選別輸送に関与するRab35もホスホコリン化された。AnkXを異所的に発現する真核細胞では、巨大化したエンドソーム(Rab35機能の阻害と一致する表現型)およびアルカリホスファターゼの分泌障害が見られたが、機能的なFICドメインを欠くAnkX[AnkX(H229A)]を発現する細胞では見られなかった。さらに、ホスホコリン化ができないRab1を発現する細胞でもアルカリホスファターゼの分泌の減少していた。ホスホコリン化は、Rab35のGEF であるconnecdennへの結合を阻害したが、Rab1とDrrAのGEFドメインとの相互作用は阻害しなかった。このように、ホスホコリン化はRab35の機能を阻害したが、ホスホコリン化のRab1に対する影響はまだ分かっていない。著者らは、真核生物におけるホスホコリン化の他の例も報告されていると述べている。

S. Mukherjee, X. Liu, K. Arasaki, J. McDonough, J. E. Galan, C. R. Roy, Modulation of Rab GTPase function by a protein phosphocholine transferase. Nature 477, 103-106 (2011). [PubMed]

A. Itzen, R. S. Goody, Covalent coercion by Legionella pneumophila. Cell Host Microbe 10, 89-91 (2011). [PubMed]

W. Wong, Modified by Legionella. Sci. Signal. 4, ec244 (2011).

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2011年9月6日号

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