発生生物学
Hippoの道

Developmental Biology
The Tao of the Hippo

Editor's Choice

Sci. Signal., 22 November 2011
Vol. 4, Issue 200, p. ec322
[DOI: 10.1126/scisignal.4200ec322]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. C. Boggiano, P. J. Vanderzalm, R. G. Fehon, Tao-1 phosphorylates Hippo/MST kinases to regulate the Hippo-Salvador-Warts tumor suppressor pathway. Dev. Cell 21, 888-895 (2011). [PubMed]

C. L. C. Poon, J. I. Lin, X. Zhang, K. F. Harvey, The sterile 20-like kinase Tao-1 controls tissue growth by regulating the Salvador-Warts-Hippo pathway. Dev. Cell 21, 896-906 (2011). [PubMed]

Hippoシグナル伝達経路は、細胞増殖を抑制し、器官や組織の成長を制限する。キナーゼHippo(Hpo)の活性化は、下流キナーゼWarts(Wts)を刺激して、転写因子Yorkie(Yki)のSer168をリン酸化して不活化する。HpoはSterile20様キナーゼファミリーのキナーゼであることから、Boggianoらは、このファミリーの他のキナーゼがHippoシグナル伝達に関与するのかどうかについて検討した。ショウジョウバエ(Drosophila)におけるRNA干渉(RNAi)スクリーニングから、Tao-1の欠損が通常よりも大きな翅と眼の成虫原基をもたらすことが明らかになった。さらに、Tao-1の欠損によって、Hippo経路標的遺伝子の転写が増大した。Tao-1は、HpoのThr195をリン酸化して活性化し、遺伝学的相互作用および生化学アッセイによって、翅においてTao-1を過剰発現すると、Wtsのリン酸化が亢進することが明らかになった。Wtsは、Hpoの下流標的であり、Hippo経路活性化の尺度である。細胞質タンパク質のMerlin(Mer)とExpanded(Ex)は、Hpoの活性化を促進する。MerまたはExを欠失させても、Tao-1を介するWtsのリン酸化は低下しないのに対して、Tao-1を欠失させると、MerとExを過剰発現する細胞においてWtsのリン酸化が妨げられた。このことは、MerとExがTao-1の上流で機能することを示唆する。Poonらは、Hippo経路の調節因子を同定するために、Ykiの恒常的活性型を発現するショウジョウバエ(Drosophila)のトランスジェニック系統ykiにおいてRNAiスクリーニングを実施した。Yki恒常的活性型が発現すると、眼が大きくなり、この表現型はTao-1のノックダウンにより強調された。さらに、3齢幼虫の眼原基においてTao-1を欠失させると、通常は静止期にある細胞が有糸分裂を開始し、小眼間の細胞数が増大した。このような影響は、Ykiの活性亢進によっても見られる。様々なYkiレポーター遺伝子が示すように、翅成虫原基におけるTao-1のノックダウンによって、Yki活性の亢進が誘発された。この活性亢進には、Tao-1のコイルドコイルドメインと中央ドメインだけでなく、キナーゼ活性も必要であった。Wts、およびHippo経路の足場タンパク質SalvadorSav)の過剰発現によって、眼が小さい表現型が生じ、この表現型はTao-1の過剰発現によって促進された。この作用には、Tao-1のキナーゼ活性が必要であった。Tao-1の過剰発現は、YkiのSer168リン酸化を亢進させ、このリン酸化にはHpoの存在が必要であった。Hpoの哺乳類相同分子種はMST1/2であり、TAO1はin vitroでMST1/2をリン酸化した。したがって、これらの研究から、Tao-1がHpoをリン酸化し、Hippo経路の活性化を促進することが示される。これは、進化的に保存された機能かもしれない。

W. Wong, The Tao of the Hippo. Sci. Signal. 4, ec322 (2011).

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