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代謝
それはどれほど甘いのか

Metabolism
How Sweet It Is

Editor's Choice

Sci. Signal., 28 February 2012
Vol. 5, Issue 213, p. ec64
[DOI: 10.1126/scisignal.2002999]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

G. A. Kyriazis, M. M. Soundarapandian, B. Tyrberg, Sweet taste receptor signaling in beta cells mediates fructose-induced potentiation of glucose-stimulated insulin secretion. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, E524-E532 (2012). [Abstract] [Full Text]

フルクトースは最も甘く感じる天然糖であり、舌上だけでなく、腸や膵臓などの他の器官にも存在する甘味Gタンパク質共役受容体T1R2とT1R3のヘテロ二量体によって検出される。Kyriazisらは、フルクトースは、インスリン放出を誘導すると予測される濃度(8.3mM)のグルコースと併用すると、摘出マウス膵島からのインスリン放出を増強するが、インスリン放出を誘導するとは考えられない濃度(3mM)のグルコースとの併用では増強しないことを明らかにした。野生型マウス由来β細胞では、8.3mMのグルコースによって誘発される細胞内カルシウム濃度の上昇(インスリン放出にとって必要)がフルクトースによって増強されたが、このような作用はT1R2-/-マウス由来β細胞では見られなかった。野生型またはT1R2-/-マウス由来の膵島では、グルコース濃度を8.3mMから16.7mMに上げると、インスリン放出が大幅に増大した(グルコース応答性インスリン分泌と呼ばれる現象)。また、このような増大は、フルクトースを高濃度グルコースともに野生型マウス由来膵島に適用するとさらに亢進したが、T1R2-/-マウス由来膵島では亢進しなかった。同様に、フルクトースのin vivo投与は、野生型マウスではグルコース応答性インスリン分泌を増強したが、T1R2-/-マウスでは増強しなかった。フルクトースがグルコースによる細胞内カルシウム濃度上昇を増強するためには、ホスホリパーゼC(PLC)β2と陽イオンチャネルTRPM5が必要であった。フルクトースはヒト膵島におけるグルコース応答性インスリン分泌を増強したが、この作用はT1R3の薬理学的阻害によって遮断された。著者らは、腸内の甘味受容体は、摂取グルコースの吸収、およびグルコース応答性インスリン分泌を促進するホルモンであるグルカゴン様ペプチドの放出を促進すると述べている。そして著者らは、腸と膵臓における甘味受容体は、食品製造業で広く用いられ、代謝疾患との関連性が議論されている甘味料である高フルクトースコーンシロップなどに含まれる食事性フルクトースによって活性化されると推定している。

W. Wong, How Sweet It Is. Sci. Signal. 5, ec64 (2012).

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