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生化学
PKM2は裏ではプロテインキナーゼとして機能する

Biochemistry
PKM2 Moonlights as a Protein Kinase

Editor's Choice

Sci. Signal., 20 March 2012
Vol. 5, Issue 216, p. ec81
[DOI: 10.1126/scisignal.2003059]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

X. Gao, H. Wang, J. J. Yang, X. Liu, Z.-R. Liu, Pyruvate kinase M2 regulates gene transcription by acting as a protein kinase. Mol. Cell 45, 598-609 (2012). [PubMed]

G. Semenova, J. Chernoff, PKM2 enters the morpheein academy. Mol. Cell 45, 583-584 (2012). [PubMed]

ピルビン酸キナーゼM2(PKM2)は、四量体の状態で解糖において機能し、ホスホエノールピルビン酸(PEP)からADPへとリン酸を転移することによってピルビン酸を生成させる。がん細胞では二量体のPKM2が豊富になるが、PKM2は二量体ではピルビン酸キナーゼ活性を持たず、がん細胞を代謝的に有利にする可能性がある代謝変化を引き起こす。また、PKM2は核内で機能して、転写因子の活性を調節することによって、細胞増殖を促進することも報告されている(SemenovaおよびChernoff参照)。Gaoらは、関連するいくつかのがん細胞株において、PKM2の局在と活性について調べ、細胞株の増殖の速さまたは遅さと比べた。PKM2は、増殖のより速い細胞の核内により豊富に存在した。遺伝子発現解析によって、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ5(MEK5)をコードする遺伝子が、HAタグで標識されたPKM2を過剰発現する細胞内で誘発される数百の遺伝子のうちの1つであることが示された。クロマチン免疫沈降(ChIP)およびゲル電気泳動移動度シフト解析によって、PKM2とmek5のプロモーターとの間の相互作用が確認された。MEK5をノックダウンすると、HA-PKM2の過剰発現に応答する増殖の亢進が妨げられ、MEK5の存在量はがん細胞株の増殖速度と相関した。転写因子STAT3はmek5の発現を促進し、内在性タンパク質の免疫共沈降によって、STAT3がPKM2と相互作用することが示された。ChIPでは、PKM2のノックダウンによってSTAT3とmek5プロモーターの相互作用が低下し、PKM2の過剰発現によってこの相互作用が亢進することが示された。STAT3のノックダウンまたはドミナントネガティブ変異体の発現によって、HA-PKM2に応答するmek5の誘導が妨げられた。リコンビナントPKM2(rPKM2)または核抽出物から分離されたHA-PKM2のいずれかを用いたin vitroでのキナーゼアッセイでは、HA-PKM2のみが、ATP存在下ではなくPEP存在下でのみ、グルタチオンS-転移酵素(GST)融合STAT3に対するキナーゼ活性を示した。サイズ排除クロマトグラフィー(分子ふるいクロマトグラフィー)によって、rPKM2と細胞質抽出物から単離されたPKM2は四量体であるが、核から単離されたPKM2は二量体であることが明らかになった。四量体の形成を乱すような変異をrPKM2に導入すると、rPKM2タンパク質は二量体としてのみ存在できるようになり、この変異体はin vitroにおいてSTAT3に対してプロテインキナーゼ活性を示すようになった。細胞内で二量体を強制する変異体を過剰発現すると、細胞増殖が促進され、STAT3のリン酸化が刺激された。このように、二量体のPKM2は選択的に核内に局在するようであり、そこでプロテインキナーゼとして機能して細胞増殖に関与する遺伝子の発現を亢進させる可能性がある。

N. R. Gough, PKM2 Moonlights as a Protein Kinase. Sci. Signal. 5, ec81 (2012).

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2012年3月20日号

Editor's Choice

生化学
PKM2は裏ではプロテインキナーゼとして機能する

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