破骨

Bone
Break a Bone

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 April 2012
Vol. 5, Issue 219, p. ec104
[DOI: 10.1126/scisignal.2003117]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. Fujita, M. Iwasaki, H. Ochi, T. Fukuda, C. Ma, T. Miyamoto, K. Takitani, T. Negishi-Koga, S. Sunamura, T. Kodama, H. Takayanagi, H. Tamai, S. Kato, H. Arai, K. Shinomiya, H. Itoh, A. Okawa, S. Takeda, Vitamin E decreases bone mass by stimulating osteoclast fusion. Nat. Med. 18, 589-594 (2012). [Online Journal]

G. D. Roodman, Vitamin E: Good for the heart, bad for the bones? Nat. Med. 18, 491-492 (2012). [Online Journal]

ビタミンEは脂溶性の抗酸化剤であり、主にα-トコフェロールとして生物学的に利用可能である。ビタミンEサプリメントは、心血管系への有益な効果が報告されているために、よく利用されている(Roodman参照)。しかし、骨の恒常性に関しては、有益な作用と有害な作用が異なる研究で示されている。Ttpa-/-マウスは遺伝的ビタミンE欠乏症のモデルであり、血漿由来のα-トコフェロールの再利用リサイクルを助ける肝臓タンパク質であるα-トコフェロール転移タンパク質(α-TTP)が欠損している。Fujitaらは、野生型マウスに比べ、Ttpa-/-マウスでは、骨形成の亢進ではなく、骨吸収の低下のために骨量が増大することを見いだした。野生型マウス由来骨髄細胞をα-トコフェロールで処理すると、骨芽細胞(骨形成を媒介する細胞)への分化への影響はなく、破骨細胞(骨吸収を媒介する細胞)への分化が亢進した。α-トコフェロールは破骨細胞融合(破骨細胞成熟後期に生じる)を促進したが、この作用はα-トコフェロールの抗酸化特性ではなく、破骨細胞融合に必要な受容体である樹状細胞特異的膜貫通タンパク質(DC-STAMP)をコードする遺伝子の発現亢進を介していた。骨髄細胞をα-トコフェロール処理すると、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)p38α、およびその上流キナーゼであるマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ3と6(MKK3/6)が活性化した。p38αは、破骨細胞発生に必要で、DC-STAMPをコードする遺伝子のプロモーターに結合する小眼球症関連転写因子(MITF)をリン酸化して活性化した。ヒト用栄養補助食品中と同等の濃度のα-トコフェロールを投与した野生型マウスは、骨量の減少を示し、これは骨吸収および破骨細胞の大きさの増加と相関していた。このように、ビタミンEサプリメント摂取者は骨量減少のリスクが高いと考えられる。

W. Wong, Break a Bone. Sci. Signal. 5, ec104 (2012).

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