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発生神経科学
逆行性シグナル伝達のための局所的合成

Developmental Neuroscience
Local Synthesis for Retrograde Signaling

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 April 2012
Vol. 5, Issue 220, p. ec109
[DOI: 10.1126/scisignal.2003139]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S.-J. Ji, S. R. Jaffrey, Intra-axonal translation of SMAD1/5/8 mediates retrograde regulation of trigeminal ganglia subtype specification. Neuron 74, 95-107 (2012). [Online Journal]

J. Takatoh, F. Wang, Axonally translated SMADs link up BDNF and retrograde BMP signaling. Neuron 74, 3-5 (2012). [Online Journal]

ニューロンは、軸索のような突起部を標的に向かって伸長する際に、標的からシグナルを受け取る。顔面を神経支配する三叉神経節の感覚神経は、軸索ターゲッティングおよびニューロンの運命特定を研究するための有用な系として働く(TakatohおよびWang参照)。JiおよびJaffreyは、胚性ラット三叉神経節ニューロンを単離し、細胞体と切り離して軸索を解析することができる特殊なチャンバーでそれらを培養した。顔面の上顎および眼領域の標的上皮組織によって産生されるが下顎領域では産生されない骨形成タンパク質4(BMP4)はを軸索に適用したところ、核内のリン酸化されたSMAD1、5、および8(BMP4シグナル伝達の既知の標的)の存在量が増大し、BMP4標的遺伝子Tbx3が誘導された。このBMP4応答は、軸索の分子モータータンパク質ダイニンの活性遮断による逆行性シグナル伝達の抑制、あるいはBMP4受容体阻害因子の細胞体への適用によって妨げられたことから、BMP4およびその受容体の逆行輸送が、細胞体におけるこのSMADシグナルに寄与することが示唆された。軸索にタンパク質合成阻害薬を適用したところ、逆行性シグナル伝達は遮断されたが、BMP4の逆行輸送は遮断されなかったことから、軸索における局所的な翻訳がBMP4シグナルに寄与することが示唆された。単離されたニューロンの軸策と胚性ラットのすべての三叉神経ニューロンの軸索において、SMAD1、5、および8をコードする転写産物が検出された。しかし、in vivoでは、これらのタンパク質は眼および上顎領域を神経支配する軸索でしか検出されず、下顎領域を支配する軸索では検出されなかった。脳由来神経栄養因子(BDNF)は、眼および上顎の標的上皮組織によって特異的に産生される因子である。培養ニューロンの軸索にBDNFを適用すると、SMAD1、5、および8の合成が促進された。神経栄養因子を含有しない培地で培養ニューロンを前処理することで、著者らは、細胞体において核内のリン酸化SMADを増加させるためには、BMP4逆行性シグナルにBDNFとBMP4の両方が必要であることを示した。三叉神経の特殊化におけるBDNFの重要性は、BDNFを遺伝的に欠損するマウスによって確認されたが、軸索伸長における重要性は確認されなかった。このマウスでは、眼および上顎神経と下顎神経の間のSMAD1、5、および8の存在量、核内のリン酸化SMAD、およびTbx3存在量の相違が消失していた。このように、BDNFは、軸索におけるSMAD産生を刺激し、逆行性のBMP4シグナルを促進することで、BMP4シグナルを受け取るよう軸索を予備刺激すると考えられる。

N. R. Gough, Local Synthesis for Retrograde Signaling. Sci. Signal. 5, ec109 (2012).

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