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薬理学
モルヒネの炎症性受容体

Pharmacology
Morphine’s Inflammatory Receptor

Editor's Choice

Sci. Signal., 24 April 2012
Vol. 5, Issue 221, p. ec116
[DOI: 10.1126/scisignal.2003157]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

X. Wang, L. C. Loram, K. Ramos, A. J. de Jesus, J. Thomas, K. Cheng, A. Reddy, A. A. Somogyi, M. R. Hutchinson, L. R. Watkins, H. Yin, Morphine activates neuroinflammation in a manner parallel to endotoxin. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 6325–6330 (2012). [Abstract] [Full Text]

モルヒネは、非常に有効で広く使用されているオピオイド鎮痛薬だが、神経炎症も引き起こすため、それによって鎮痛効果が弱まることもある。Wangらは、この炎症応答がモルヒネとMD-2の結合によって媒介されることを報告している。MD-2はToll様受容体4(TLR4)複合体の細胞外構成要素で、リポ多糖(LPS)にも結合する。モルヒネがMD-2に結合すると、TLR4の炎症シグナル伝達が引き起こされた。in vitroの結合アッセイでは、モルヒネは精製ヒトMD-2と結合し、LPSおよびクルクミン(MD-2に結合する蛍光プローブ)と競合することが示された。モルヒネとMD-2の分子動力学シミュレーションでは、モルヒネとの結合により、LPSによって誘導されるのと同様の立体構造変化が引き起こされることが示唆された。タグ付けされたTLR4とMD-2を過剰発現する細胞では、モルヒネによってTLR4とMD-2のオリゴマー形成が誘導された。このオリゴマー形成は、シグナルの開始に不可欠である。TLR4とMD-2が内因的に発現されている中枢神経系の内皮細胞の初代培養では、モルヒネはTLR4シグナル伝達(マイトジェン活性化プロテインキナーゼp38とERKのリン酸化によって示される)を引き起こし、インターロイキン1βなどの炎症性メディエーターをコードするmRNAを誘導した。また、モルヒネはBV-2ミクログリアでも炎症性シグナル伝達を誘導し、これらの応答は、TLR4またはMD-2のノックダウンによって鈍化した。TLR4またはTLR4のアダプタータンパク質MyD88の遺伝的欠失マウスでは、野生型の対照マウスに比べて、モルヒネの鎮痛効果が強められていた。ノックアウトマウスの脊髄サンプルの解析では、モルヒネに応答したp38リン酸化の亢進が確認された。培養BV-2細胞でモルヒネによって誘導された炎症性シグナル伝達は、2つの低分子阻害薬によって消失された。一方はTLR4を標的としてMD-2との相互作用を妨げ、他方はMD-2を標的としてモルヒネとの結合を妨げた。さらに、この低分子阻害薬のどちらか一方をモルヒネとともにラットのくも膜下腔内に注射すると、モルヒネの鎮痛効果は増強された。TLR4ノックアウトマウスで行なわれた同様のin vivo研究では、TLR4阻害薬とMD-2阻害薬によるモルヒネの鎮痛効果の増強は消失した。このように、MD-2はモルヒネ受容体であり、モルヒネがこの受容体と結合するとTLR4シグナル伝達が刺激され、モルヒネの炎症作用が生じる。

N. R. Gough, Morphine’s Inflammatory Receptor. Sci. Signal. 5, ec116 (2012).

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