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細胞移動
好中球を軌道に保つ

Cell Migration
Keeping Neutrophils On Track

Editor's Choice

Sci. Signal., 22 May 2012
Vol. 5, Issue 225, p. ec141
[DOI: 10.1126/scisignal.2003244]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

P. V. Afonso, M. Janka-Junttila, Y. J. Lee, C. P. McCann, C. M. Oliver, K. A. Aamer, W. Losert, M. T. Cicerone, C. A. Parent, LTB4 is a signal-relay molecule during neutrophil chemotaxis. Dev. Cell 22, 1079-1091 (2012). [PubMed]

好中球は、感染部位や炎症部位に対して最初に応答し、細菌性ホルミルペプチドfMLPなどの一次化学誘引物質によって血液から動員される。炎症部位の細胞がfMLPに曝露されると、炎症促進性の二次化学誘引物質の放出が刺激される。この物質は、他の細胞を動員して炎症応答を増大させる。アラキドン酸(AA)の代謝産物であり、二次化学誘引物質のロイコトリエンB4(LTB4)は、炎症部位に到達した好中球によって分泌されると考えられることに注目し、Afonsoらは、好中球の遊走の際にもLTB4が役割を果たすのかどうかについて検討した。著者らは、fMLPがヒト好中球によるLTB4の分泌を誘導することを確認し、ウェスタンブロット解析によって、LTB4産生の薬理学的遮断(AAを代謝する酵素の阻害による)、あるいは競合薬によるLTB4受容体(BLT1)の遮断は、fMLPによって誘導されるキナーゼERK1/2およびAktの活性化に影響を与えないことを示した。しかし、LTB4の阻害によって、fMLP依存性のcAMP産生およびミオシンIIのリン酸化が低下した。これらは、好中球の極性化および細胞後方の退縮(uropod)に必要である。飽和していない濃度のfMLPでは、LTB4分泌によって、好中球の先導端におけるアクチン重合が促進され、極性化が安定になった。トランスウェルアッセイでは、LTB4の産生またはシグナル伝達を遮断することによって、好中球のfMLPへの遊走は抑制されたが、インターロイキン-8への遊走は阻害されなかった。インターロイキン-8は、好中球からの比較的少ないLTB4分泌しか誘導しないケモカインである。BLT1またはLTB4産生酵素を欠損するマウスの好中球は、fMLP受容体(FPR1)の合成アゴニストであるMKYMYmに向けてあまり遊走しなかった。野生型好中球と混合すると、fpr1-/-好中球はMKYMYmへの遊走能力を獲得したが、野生型好中球によるLTB4産生を遮断すると、この遊走能力は消失した。総合すると、これらのデータは、fMLPに向かって遊走する好中球によるLTB4の分泌は、選択的なfMLP依存性のシグナル伝達を亢進させ、遊走を促進するための二次勾配として働くことを示唆する。

J. F. Foley, Keeping Neutrophils On Track. Sci. Signal. 5, ec141 (2012).

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2012年5月22日号

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好中球を軌道に保つ

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