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植物の生物学
活性化としての細胞内移行

Plant Biology
Internalization as Activation

Editor's Choice

Sci. Signal., 16 October 2012
Vol. 5, Issue 246, p. ec266
[DOI: 10.1126/scisignal.2003690]

Ernesto Andrianantoandro

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)によるシグナル伝達は、動物細胞と植物細胞では異なっている。動物細胞ではGPCRがGタンパク質を活性化するのに対して、植物細胞のGタンパク質は恒常的に活性化されており、GPCRはGタンパク質の抑制因子として機能する。シロイヌナズナ(Arabadopsis)は非標準的なGPCRであるAtRGS1を有しているが、これは7回膜貫通ドメインと1つの調節ドメイン(RGS)を含み、グルコースの感知、細胞の増殖と伸長、および発生にとって必要である。シロイヌナズナのGαサブユニット(AtGPA1)は自己活性化し、AtRGS1のRGSによって阻害される。Uranoらは、グルコース存在下でのAtRGS1の活性と局在について調べた。胚軸表皮細胞の顕微鏡観察によって、AtRGS1の蛍光タンパク質融合体はグルコースに応答して細胞内移行し、AtGPA1の蛍光タンパク質融合体は細胞膜に局在するようになることが明らかになった。AtRGS1はエンドソームのマーカーと共局在していた。AtGPA1とßサブユニット(AGB1)の両方を欠損させるとAtRGS1の細胞内移行は消失したが、個々のサブユニットの欠損によっては消失しなかった。GTP加水分解能を欠く恒常的活性化型の突然変異体であるAtGPA1Q222Lを過剰発現させると、グルコースの非存在下でも細胞内移行が起こったが、AGB1の欠損によってその効果は抑制された。AtGPA1と相互作用しない突然変異であるAtRGS1E320Kは、グルコースに対しても、AtGPA1Q222Lと共発現されたときでも細胞内移行は示さなかったことから、細胞内移行が起こるためにはこの受容体とGタンパク質が相互作用する必要があることが示された。多くのGPCRはリン酸化による調節を受けるので、著者らは、酵母相補性スクリーニングにおいてこれまでに同定されていた相互作用パートナーの中から、候補となるキナーゼを探索した。候補キナーゼのAtWNK8またはAtWNK10を欠損する細胞では、グルコースはAtRGS1の細胞内移行を誘発しなかった。共免疫沈降法およびin vitroリン酸化の研究によって、AtWNK8はAtRGS1をリン酸化することが示された。AtWNK8によるリン酸化を受ける部位を欠損する三重点突然変異体は、細胞内移行しなかった。精製AtWNK8は精製AGB1と共免疫沈降したが、AtGPA1とは共沈降しなかった。蛍光タンパク質を融合させたAtWNK8とAtRGS1はグルコースに応答して細胞膜で会合した。AtWNK8またはAtWNK10のいずれかを欠損する細胞では、AtRGS1シグナル伝達の下流での遺伝子発現は低下し、両方のキナーゼを欠損する細胞では消失していた。これらの結果は、植物におけるGPCR調節の機構は、受容体のエンドサイトーシスによることを示唆する。すなわち、グルコース非存在下では、AtRGS1のRGSにより阻害されて、このRGSに結合する自己活性化型Gαは、ßγサブユニットに結合している不活性なGαと平衡状態にある。グルコースはRGSとの結合状態を安定化し、遊離のßγをAtWNK8に動員し、これがRGSをリン酸化して、AtRGS1の細胞内移行を促進し、細胞膜に活性化Gαをとどめると考えられる。

E. Andrianantoandro, Internalization as Activation. Sci. Signal. 5, ec266 (2012).

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2012年10月16日号

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植物の生物学
活性化としての細胞内移行

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