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神経免疫学
血管による神経回路再構成

Neuroimmunology
Neuronal Rewiring by Blood Vessels

Editor's Choice

Sci. Signal., 20 November 2012
Vol. 5, Issue 251, p. ec296
[DOI: 10.1126/scisignal.2003789]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Muramatsu, C. Takahashi, S. Miyake, H. Fujimura, H. Mochizuki, T. Yamashita, Angiogenesis induced by CNS inflammation promotes neuronal remodeling through vessel-derived prostacyclin. Nat. Med. 18, 1658-1664 (2012). [PubMed]

A. J. Brumm, S. T. Carmichael, Not just a rush of blood to the head. Nat. Med. 18, 1609-1610 (2012). [PubMed]

多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)では、皮質脊髄路のニューロンが軸索の脱髄を示し、運動障害が生じる。炎症は血管新生を誘発することができる。Muramatsuら(BrummとCarmichaelも参照)は、限局性EAEマウスにおいて、血管新生がEAEで起こることがある2つの事象(ニューロンからの線維発芽(病変を迂回するための側副路の形成と神経回路の再編成を引き起こすことがある)および後肢運動能障害の部分寛解)に先行して亢進することを明らかにした。EAEマウスの培養内皮細胞は、プロスタサイクリンの安定な代謝産物である6-ケトプロスタグランジンF1α(6-ケト-PGF1-α)を放出した。プロスタサイクリンは、免疫組織化学法で後肢運動皮質中のニューロンに検出されるI型プロスタグランジン受容体(IP受容体)のリガンドである。マウス皮質ニューロンを血管内皮細胞と共培養すると、単培養時に比べて神経突起が伸長した。この作用は、IP受容体アゴニストのイロプロストによって亢進し、IP受容体アンタゴニストのCAY10441によって、あるいは血管内皮細胞をニューロンと共培養する前にプロスタグランジン合成酵素(PGIS)に対するsiRNAを血管内皮細胞に導入することによって減弱した。EAE病変の誘導後に、PGIS量は増大し、PGISは増殖内皮細胞マーカーであるCD105と共局在化した。in vivoで、IP受容体に対するsiRNAを後肢運動皮質中のニューロンに、またはPGIS siRNAを血管内皮細胞に導入すると、EAE誘導後の皮質脊髄路における側副路形成および運動機能の自発的回復が低下した。さらに、イロプロストの髄腔内注入によってIP受容体活性を増大させると、皮質脊髄路における線維発芽、皮質誘発脊髄後索電位(大脳皮質からEAE病変下部の皮質脊髄路への結合)、および後肢運動能が亢進したのに対して、IP受容体アンタゴニストのCAY10441には逆の作用があった。このように、EAEでの炎症性損傷後に形成される血管はプロスタサイクリンを放出し、神経線維発芽、神経回路再編成および運動機能の回復を促進する。

W. Wong, Neuronal Rewiring by Blood Vessels. Sci. Signal. 5, ec296 (2012).

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2012年11月20日号

Editor's Choice

神経免疫学
血管による神経回路再構成

Research Article

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Perspectives

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